日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS35_30PO1] ジオパーク

2014年4月30日(水) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*目代 邦康(自然保護助成基金)、有馬 貴之(首都大学東京都市環境科学研究科)、大野 希一(島原半島ジオパーク推進連絡協議会)、平松 良浩(金沢大学理工研究域自然システム学系)、尾方 隆幸(琉球大学教育学部)、渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

18:15 〜 19:30

[MIS35-P09] 地球と大地の大規模変動を語るアポイ岳ジオパーク

*新井田 清信1アポイ岳ジオパーク 推進協議会2 (1.北海道大学総合博物館、2.様似町)

キーワード:アポイ岳ジオパーク, かんらん岩, 上部マントル, 玄武岩質マグマ, プレート境界, 地球変動

アポイ岳は,日高山脈の南端に位置し,南に太平洋が広がる.ここが地理学的にも地質学的にも千島弧と本州弧の2つの島弧のちょうど境界部に位置していることから,日高山脈は(北米プレートとユーラシアプレートの境界部で)千島弧側が西側に衝上してできた(木村,1981)と考えられてきた.北海道大学総合博物館のアイランド・アーク学術標本展示でも,アポイ岳のかんらん岩は日高山脈の上昇とともに玄武岩質マグマのふるさと「上部マントル」から持ち上げられて地表に露出した(新井田,1999)と解説された.このような経緯から,アポイ岳ジオパークでは「かんらん岩から地球の深部と大地の変動を学ぶ」という目標がテーマの1つ掲げられ,様似町役場前の「アポイの鼓動(かんらん岩広場)」のパンフレットでも同じ基調で解説されている.

最近,注目すべき地球儀スケールの構造図が,日本地方地質誌1「北海道地方」の概説に掲載され,北半球のプレート運動と日高山脈の成立との関係を解説している(新井田,2010).北米プレートとユーラシアプレートの衝突境界は,現在は日本海東縁にあると考えられているが,日高山脈の上昇ステージ(新生代中新世後期)には北海道の中軸部に位置し,ここで日高山脈が形成された.また,この衝突境界の北方延長は,北極点付近から拡大境界に転じ,地球の反対側で大西洋中央海嶺に連続するのである.

このような地球規模の変動帯としては,アルプス山脈からギリシャ?トルコ?イラン?オマーン?パキスタン?インダススーチャ?アンダマン?グレートスンダに続くテーチス海のオフィオライト帯が第1級の規模である.そこには,有名な,アフリカ大陸とユーラシア大陸の衝突帯でできたアルプス山脈やインド大陸とアジア大陸の衝突帯でできたヒマラヤ山脈が形成されている.北海道の日高山脈も,北半球をほぼ縦割りにした地球変動帯でできた山脈であり,北アメリカプレートとユーラシアプレートの2つの巨大プレート境界で起こった地球規模の地質イベントとして,もう少し大きな声でその魅力を伝える必要がありそうだ.

この発表では,アポイ岳ジオパークがグローバルに「地球と大地の大規模変動」を学ぶことができる拠点ジオパークになりうるかどうかを検証してみたい.

<文献>
木村 学, 1981, 地質雑, 87, 757-768.
新井田清信,1999,北海道大学総合博物館学術資料展示解説書,22-28.
新井田清信,2010,日本地質学会(編)日本地方地質誌1「北海道地方」,朝倉書店,1-15.