日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS36_1AM1] 結晶成長における界面・ナノ現象

2014年5月1日(木) 10:00 〜 10:45 314 (3F)

コンビーナ:*木村 勇気(東北大学)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、塚本 勝男(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、佐藤 久夫(三菱マテリアル株式会社エネルギー事業センター那珂エネルギー開発研究所)、座長:荒木 優希(神戸大学大学院理学研究科)、木村 勇気(東北大学)

10:30 〜 10:45

[MIS36-02] セメント物質の逆ケミカルガーデン反応

*佐藤 久夫1古川 えりか2木村 勇気2 (1.三菱マテリアル、2.東北大学)

キーワード:逆ケミカルガーデン反応, セメント物質, C-S-H, 流体反応透過電子顕微鏡

近年、ナノスケール鉱物学は星間ダストや小惑星由来の物質に知られる地球外物質からごく普通の工業生産物質であるセメントにまで広く拡張されている。ナノ物質における固有の性質は、(1)核形成、(2)自己組織化、(3)組織の柔軟性の観点において特徴づけることができる。非常に一般的な工業物質であるセメントは、カルシウムケイ酸塩水和物(C-S-H)のナノ粒子で構成されている。最近、干渉計やナノ観察技術を使ったセメント物質の結晶成長実験が可能となった。水酸化カルシウムやそれ以上のアルカリ性溶液と反応するケイ酸塩からC-S-Hを形成するセメント反応は、建設中やその後のビルで広く起きているものであり、同様の反応は、トンネルやダム、放射性廃棄物処分場などのコンクリート建造物と天然の岩石が接触している界面などでも予想される。垂直走査干渉計を用いた岩石の高アルカリ変質実験は、C-S-H沈殿の振る舞いが天然岩石における逆ケミカルガーデン反応によってもたらされることを明らかにした(Satoh et al., in press)。このとき、岩石上のC-S-Hの成長速度は非常に遅く、およそ2.4E-3 nm/sと観測された。そのC-S-Hの壁は半透膜のようにナノポアをもっていて、それを通して溶質のイオン選択が起きていることも確認された。最近になって、我々は新たに開発された溶液反応電子顕微鏡観察装置Poseidonによる超微細観察手法をシリカヒューム(Elkem Microsilica 940-U, ~150 nm)と水酸化カルシウム飽和溶液における逆ケミカルガーデン反応の研究に適用した。その結果、この反応は数分から数十分の短期間で観察でき、シリカの水和(体積膨張)で始まり、続いてひも状およびベール状のC-S-H形成が起こることを明らかにした。ひも状C-S-Hの成長速度は4.5E-2 nm/sであり、これは続いて起こるベール形成のためのフレームネットワークとなるには充分速いものである。またこのベール状CSHは時間と共に化学組成がCa-richへと変化することをFESEM-EDS分析によって確認した。この観察した過程は、逆ケミカルガーデン反応、すなわちセメント固化反応の素過程と思われる。超微細観察によるC-S-H成長の探究は将来の地下水環境のシミュレーションを改善するために役立つであろう。