17:06 〜 17:21
★ [MTT41-P04_PG] 月の地形表現手法としての赤色立体地図
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:月, DEM, 地形表現, 赤色立体地図, クレーター, かぐや
概要
近年、日本のかぐや、NASAのLOLAなど、月面の詳細な地形データが取得されるようになり、地形表現手法が課題となってきた。月の地形的特徴が地球上の火山地形と類似していることに着目し、レーザ計測による火山地形表現に特化して開発された赤色立体地図を月の地形表現に適用した。その結果、月の地形的特徴を非常によく表現ができたので報告する。
月の地形の特徴
月の地形は、多数の衝突クレーターが分布する高地と、海と呼ばれる溶岩平原で特徴づけられる。月には大気や水がなく海もないので、水による侵食地形がみられない。風も吹かないので砂丘もない。いったん形成された地形が、風化侵食によって変化することはなく、形成時の状態が長期にわたって保存される。そのため、宇宙空間からの隕石衝突によるクレーター、火山噴火にる楯状火山や溶岩流のほか、地殻変動によるリッジや断層が特徴的にみられる。これらの点は、スケールは異なるものの、地球の火山地形と類似している。月の高地のクレーター群は地球上の火山地域の小火口群と、月の海の地形が地球上の火山山麓や平野の地形と類似しているといえよう。
地形表現手法の問題
このような相対的な凹凸が少ない地形の表現にとって、等高線は不向きである。小縮尺の地勢図や地図帳では、陰影や高度段彩を併用している。月の小縮尺地形表現にも、陰影段彩図を使用することがほとんどであった。しかし、月の表面はクレーターが数多く分布し重なり合っている。このような窪地を陰影図で表現すると、光源の方向によって凹凸が反転して見える場合があり問題であった。
火山地形と赤色立体地図
日本の火山は樹木で覆われていることが多く、微地形判読は難しい。近年、航空レーザ計測の技術が進歩し、樹木を除去した詳細な地形データが取得できるようになってきた。微地形を観察し、重なり関係や切り合い関係から、火口の形成過程や溶岩流の流下プロセスを理解することができる。一方で、地形データが飛躍的に高精度になり、そのデータを表現するために、陰影図と高度段彩では、窪地や孤立丘の多い火山地形では表現手法として不十分であった。近年では、その点に特化して開発された赤色立体地図を利用する場面が多くなってきた。この図によって、多くの火山学的新発見がもたらされてきた。
赤色立体地図
赤色立体地図は、斜度図を改良した方法である。斜度を赤のグラデーションで表し、尾根谷度を明度に比例させて作成する。すなわち、急斜面ほど明るく、尾根ほど明るく、谷や窪地ほど暗く表現する手法である。この図は、1枚でオルソ画像ながら立体感があり、火山の微地形の特徴を判読するために改良工夫されたものであり、当初青木ヶ原樹海の地形地質調査のために開発された。尾根や谷の表現には地上開度と地下開度を合成して利用しており、地形のフラクタル性を考慮した表現が可能となっている。
月の赤色立体地図
そこで、われわれは、地球上の火山地形の表現で有効であった赤色立体地図を月の地形表現に応用することを試みたので、ここに紹介する。使用した地形データはかぐやによるもので、1/20度メッシュに調整して利用した。また、作成した画像は、国土地理院のwebページでも公開中である。SeciumやThree.jsなどの3次元高速表示も可能となっている。
謝辞
自然科学研究機構 国立天文台および宇宙航空研究開発機構には「かぐや」による月の地形データを提供していただきました。
近年、日本のかぐや、NASAのLOLAなど、月面の詳細な地形データが取得されるようになり、地形表現手法が課題となってきた。月の地形的特徴が地球上の火山地形と類似していることに着目し、レーザ計測による火山地形表現に特化して開発された赤色立体地図を月の地形表現に適用した。その結果、月の地形的特徴を非常によく表現ができたので報告する。
月の地形の特徴
月の地形は、多数の衝突クレーターが分布する高地と、海と呼ばれる溶岩平原で特徴づけられる。月には大気や水がなく海もないので、水による侵食地形がみられない。風も吹かないので砂丘もない。いったん形成された地形が、風化侵食によって変化することはなく、形成時の状態が長期にわたって保存される。そのため、宇宙空間からの隕石衝突によるクレーター、火山噴火にる楯状火山や溶岩流のほか、地殻変動によるリッジや断層が特徴的にみられる。これらの点は、スケールは異なるものの、地球の火山地形と類似している。月の高地のクレーター群は地球上の火山地域の小火口群と、月の海の地形が地球上の火山山麓や平野の地形と類似しているといえよう。
地形表現手法の問題
このような相対的な凹凸が少ない地形の表現にとって、等高線は不向きである。小縮尺の地勢図や地図帳では、陰影や高度段彩を併用している。月の小縮尺地形表現にも、陰影段彩図を使用することがほとんどであった。しかし、月の表面はクレーターが数多く分布し重なり合っている。このような窪地を陰影図で表現すると、光源の方向によって凹凸が反転して見える場合があり問題であった。
火山地形と赤色立体地図
日本の火山は樹木で覆われていることが多く、微地形判読は難しい。近年、航空レーザ計測の技術が進歩し、樹木を除去した詳細な地形データが取得できるようになってきた。微地形を観察し、重なり関係や切り合い関係から、火口の形成過程や溶岩流の流下プロセスを理解することができる。一方で、地形データが飛躍的に高精度になり、そのデータを表現するために、陰影図と高度段彩では、窪地や孤立丘の多い火山地形では表現手法として不十分であった。近年では、その点に特化して開発された赤色立体地図を利用する場面が多くなってきた。この図によって、多くの火山学的新発見がもたらされてきた。
赤色立体地図
赤色立体地図は、斜度図を改良した方法である。斜度を赤のグラデーションで表し、尾根谷度を明度に比例させて作成する。すなわち、急斜面ほど明るく、尾根ほど明るく、谷や窪地ほど暗く表現する手法である。この図は、1枚でオルソ画像ながら立体感があり、火山の微地形の特徴を判読するために改良工夫されたものであり、当初青木ヶ原樹海の地形地質調査のために開発された。尾根や谷の表現には地上開度と地下開度を合成して利用しており、地形のフラクタル性を考慮した表現が可能となっている。
月の赤色立体地図
そこで、われわれは、地球上の火山地形の表現で有効であった赤色立体地図を月の地形表現に応用することを試みたので、ここに紹介する。使用した地形データはかぐやによるもので、1/20度メッシュに調整して利用した。また、作成した画像は、国土地理院のwebページでも公開中である。SeciumやThree.jsなどの3次元高速表示も可能となっている。
謝辞
自然科学研究機構 国立天文台および宇宙航空研究開発機構には「かぐや」による月の地形データを提供していただきました。