日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT41_28PO1] 地球惑星科学における地図・空間表現

2014年4月28日(月) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*小荒井 衛(国土地理院地理地殻活動研究センター地理情報解析研究室)、鈴木 厚志(立正大学地球環境科学部)

18:15 〜 19:30

[MTT41-P16] 地理空間情報の平面位置正確度の評価

*小清水 寛1村上 真幸1 (1.国土地理院)

キーワード:位置正確度

測位情報精度の更なる向上への期待を背景として,測位情報を用いたサービスの更なる高度化へ向けた取り組みが活発になっている.例えばITS(高度道路交通システム)サービス分野では,誰もが共通に利用できる高精度地図(オーソリティマップ)を利用した各種運転支援サービスが検討されている.今後,測位情報とペアとなるべき地図の平面位置正確度に関する情報開示が,今まで以上の詳細さで求められると予想される.
地図を描画するための幾何情報が収録されている地理空間情報の位置正確度については,公共測量の作業規程の準則において標準偏差と呼ばれる指標の制限値が設定されている.縮尺が1/2500に相当する地図表現精度を有する数値地形図データに対する平面位置の標準偏差は,新規測量の場合には1.75m以内,修正測量の場合には2.50m以内と規定されている.
しかしながら,この規定値をそのまま地理空間情報の位置正確度とするには問題がある.まず,標準偏差と呼ばれる指標の従う確率分布が明示されていない.さらに,上記制限値は公共測量の実態や他国の制限値と比べて大きすぎるのではないかという問題提起が過去になされている.
そこで,米国連邦地理データ委員会(FGDC)の位置正確度策定基準に影響を与えたGreenwalt-Shultz(1968)による二次元正規分布の考察結果を用いて,指標の明示的な定義を以下のように与える.地理空間情報のサンプル(地図)の検証点における残差(測定された座標値と真とみなせる座標値との差)の水平成分値x , yを実現値にもつような確率変数を各々X, Yとおく.残差に系統的誤差や異常値が含まれないならば,残差は平面位置正確度を表現するとみなせる.X(Y)が母平均0,母分散sx^2(sy^2)を有する正規分布に従うと仮定し,確率密度関数をfx(fy)とおく.fxとfyを周辺密度関数にもつ二次元の確率密度関数をfとし,極座標変換を用いて検証点残差が半径Rの閉円盤に収まる確率P(R)を求めることができる.母分散sxとsyが等しい場合にはs^=sxで定義される指標s^はP(s^)=0.3935を満たす.母分散sxとsyが等しくない場合には,P(R)を第一種変形ベッセル関数の積分変換の形式に変形して,数値計算することにより,P(s)=0.3935を満たすsはs=0.5(sx+sy)と近似的に表現することができる.sxとsyに等しい場合のsはs^に一致する.そこで,このsをCircular Standard Error(以下「CSE」と略す)と呼び,地理空間情報の平面位置正確度の指標とする.sの推定値は検証点残差から得られる.
さらに,縮尺1/2500相当の数値地形図データのサンプル集合を対象として,CSEの平均値や実質的な制限値を大まかに見積もる調査を実施した.GNSS測量機を用いた現地測量から検証点における真とみなせる座標値を求め,バイアスは事前に(極力)除去している.その結果,CSE推定値の平均値は0.3~0.4m程度,上限値は概ね0.8mであるこという見積もりが得られた.この見積もりは,地理空間情報の平面位置正確度の指標としてCSEを採用するならば,指標制限値を国外の制限値並に厳しくする必要性を示唆している.