日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT43_1PM2] インフラサウンド及び関連波動が繋ぐ多圏融合地球物理学の新描像

2014年5月1日(木) 16:15 〜 18:00 311 (3F)

コンビーナ:*山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、新井 伸夫(日本気象協会)、座長:山本 真行(高知工科大学 システム工学群)

16:30 〜 16:45

[MTT43-05] 火山の爆発的噴火に伴う電離圏擾乱:GNSSによる観測

*中島 悠貴1日置 幸介1 (1.北海道大学理学院自然史科学専攻)

キーワード:GPS, GNSS, 空震, 音波, 火山噴火, 電離圏

地表での様々な自然現象や人為的現象により引き起こされた、大気中の内部重力波や音波は、地表約300km上空の電離圏F領域を揺さぶることが多数報告されている [Calais et al., 1998 GJI; Heki and Ping, 2005 EPSL]。火山噴火により発生した音波は、近傍では空振として観測されるが、上空に伝搬して電離圏擾乱も引き起こすことが知られている[Heki, 2007 GRL]。我々は国土地理院が日本全国に1240点展開しているGNSS連続観測網GEONETの観測データから、電離圏全電子数 (Total Electron Content; TEC)を抽出し、最近の爆発的火山噴火による電離圏擾乱をとらえてその特徴を明らかにすることを目指している。 Heki [2006]は、GEONETデータの解析から、2004年9月1日11:02 UTに浅間山で起こった噴火に伴い、真南から南西にかけての領域においてTECが0.1 TECU程度、変動したことを見出した。そして変動量から大気波動のエネルギーを求め、さらに既知のエネルギーを持つ人工的爆発がもたらした電離圏擾乱[Calais et al., 1998]と振幅を比較することによって、火山噴火そのもののエネルギーを概算している。その後Dautermann et al. [2009 JGR]は,西インド諸島Montserrat島火山の2003年の爆発的噴火に関して同様の研究を行っている.今回、我々は同様の変動を、霧島新燃岳で2011年1月31日22:54UTに発生した噴火について見出した。気象庁による霧島山の火山解説資料 (平成23年1月) によると、この噴火で458 Paの空振が発生し、鹿児島県霧島市で窓ガラスの破損する被害が生じている。また2009年10月に発生した桜島火山の爆発的噴火に伴って、Peak-to-peakで最大0.2-0.3 TECU程度の擾乱が熱圏の音速で南に伝搬してゆく様子も見出した。擾乱は音波が熱圏に達するのに要する10分程度経過してから現れる。また地震時地殻上下変動が励起する音波による電離圏擾乱が約4分の周期を持つのに対して、火山噴火による擾乱は2分弱と有意に短い周期を持つことがわかった。当日は、2011年霧島新燃岳や2009年桜島の爆発的噴火によるTEC変動の事例を、浅間山など他の火山での事例と比較して議論する。