日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT43_1PO1] インフラサウンド及び関連波動が繋ぐ多圏融合地球物理学の新描像

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、新井 伸夫(日本気象協会)

18:15 〜 19:30

[MTT43-P01] パラオにおける高精度気圧アレー観測(序報)

*石原 靖1深尾 良夫1志藤 あずさ2大林 政行1城岡 竜一1 (1.海洋研究開発機構、2.京都大学理学研究科附属地球熱学研究施設)

キーワード:大気重力波, 脈動

大気・海洋・固体地球の各層には多様な波動が常時、時にはイベント的な信号として伝播し、層間で相互作用を及ぼしている。その知見を深めるためには従来の枠組みに囚われた個々の観測では議論を進めることが難しく、領域間を連携した統合的な観測が必要であろう。そのテストフィールドとして我々は西太平洋熱帯域に位置するパラオに注目した。パラオでは太平洋域地球物理観測網(海半球ネットワーク)の一環として広帯域地震観測点が設置されている。また現在この観測点の移設作業が進められており、パラオにて2地点で地震観測がされている。一方、JAMSTECのグループがレーダーを含む気象観測施設を運用しており、周辺の気象環境の常時モニターがなされている。このような背景があることから、この地での統合的観測の可能性を考え、その一環としてパラオに高精度気圧計の小規模アレーを構築した。

パラオは熱帯域にあることから、日本のような中緯度地域や極地と比較すると数日周期の高・低気圧や前線帯の通過がなく、日常的には気象環境としては安定した環境である。特に今回は超低周波帯域に着目していることから、信号源の抽出・解釈などに優位であると考えられる。またパラオにはCTBTOのインフラ・サウンドのアレー網も設置されていることから、今回の観測と併せて広帯域気圧観測が実現することも、この地をテスト・フィールドとした背景である。

観測はセンサーとしてパロサイエンテフィック社製の水晶振動子型高精度気圧計を用い、収録はシリアル通信を介してLinux Box で記録する。サンプリングは低帯域に注目して分解能を高めるために2 sps としている。アレーはパラオ国内の5点に展開している。その内2地点は地震観測点に、また1地点は気象観測点に設置している。観測点の間隔は20km前後である。この観測アレーは2013年8月に展開され、電源系の若干のトラブルが発生したものの概ね安定して計測を続けている。

データの回収直後のレビューによると、周期200秒以上の帯域では大気重力波と見られる波群が多数確認されており、対応する位相も容易に追跡ができる。伝播速度は20 ? 30 m/s程度である。また頻繁にイベント的な大振幅の信号も到来している。伝播する方向は、その都度変化しているようであり、多くの信号はアレーの外部から到来している。本発表では観測される大気重力波の特性や周囲の気象状況との関連について報告する。