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[MZZ45-02] 坪井誠太郎資料調査から得られた知見:遺された手紙類を読み解く
キーワード:科学史, 日本地質学史, 坪井誠太郎, アーカイブ
発表者は,JpGU2012年大会にて発表したように,東京大学大学院情報学環社会情報研究資料センターに収められている地質学者 坪井誠太郎(1893-1986年)に関する大量の資料(以下,「誠太郎資料」)の調査を,2010年から進めている1).坪井は,1920年代から1950年代にかけて,物理学的・化学的手法(溶融実験,偏光顕微鏡を用いた光学分析)を用いた火成岩成因研究を行なった.多くの地質学者が,肯定的であれ否定的であれ,彼の研究に惹きつけられた.東京(帝国)大学地質学教室教授として当時の日本地質学界のいわば「頂点」にいたこともあって,日本の地球科学の動向に大きな影響を与えた. 「誠太郎資料」の調査を始める前に発表者が得ていた知見では,坪井の日本地質学界への影響力は,坪井が1954年に停年によって東大地質学教室から退いた後は,急速に減少したことが窺われた.ところが,「誠太郎資料」として遺されている彼の著作に関して出版社と交わされた手紙や,印税額の通知書類などを分析した結果,坪井が行なった研究は1980年ごろになっても,相当な関心を集めていたことが分かった. 本発表では,「誠太郎資料」から得られた上記の新知見を,資料を実際に紹介しながら具体的に論じてみたい. 注1)栃内文彦:「地球科学史資料のアーカイブ化:坪井誠太郎資料調査からの知見より」(2012年5月20日).これまでの調査の概要は,栃内文彦: 「「坪井誠太郎資料」の意義 -同資料の概要調査から得られた知見-」, 『東京大学大学院情報学環社会情報研究資料センターニュース』23号, 2013年3月, pp. 1-6.なお,2012年度以降の調査・研究は(本発表も含めて),JSPS科研費(課題番号24650583)の助成を受けて行われている.