日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ45_29PM2] 地球科学の科学史・科学哲学・科学技術社会論

2014年4月29日(火) 16:15 〜 17:45 422 (4F)

コンビーナ:*矢島 道子(東京医科歯科大学教養部)、青木 滋之(会津大学文化研究センター)、山田 俊弘(千葉県立船橋高等学校)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、座長:青木 滋之(会津大学文化研究センター)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

16:15 〜 16:30

[MZZ45-08] 部分的な共役可能性:固体地球物理学における複数の観測システム間の翻訳について

*森下 翔1 (1.京都大学/日本学術振興会)

キーワード:共約不可能性, 観測システム, 翻訳

共役不可能性のテーゼは、1960年代にクーンとファイヤアーベントによって科学哲学へと導入された。この概念は当初複数のパラダイムや概念枠組みの間の翻訳にかかわる問題として議論されてきたが、90年代に科学哲学者のハッキングによって、実験系に代表される閉じたシステム(理論-物質系)間の関係にかかわる概念として拡張された[Hacking 1992]。その主張を観測科学の文脈に引き直すならば、大略以下のようになるだろう。各々の観測装置は閉じたシステムを形成している。すなわちその観測装置に固有の観測手順を持ち、観測装置の構造に応じた測定原理を持つ。生み出されたデータは固有の視覚的表示の形式によって可視化され、固有の補正手法を通じて解析される。つまり観測装置が異なれば観測手順、観測対象、解析手法、視覚的表示の形式やその分節化の在り方は全く異なり、それら一連の関係によって構成される特定の観測システムからもたらされる結果を、他の観測システムの結果へと翻訳することは原理的に困難である。このような共役不可能性のテーゼは、「異なる観測システムからもたらされる結果の比較がいかにして達成されうるのか」という問題を提起する。本発表ではこのような比較の試みを「部分的共役」と呼び、固体地球物理学からジョイント・インバージョンを始めとするいくつかの事例を示し、その具体的な位相について検討する。