日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

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[M-ZZ45_29PO1] 地球科学の科学史・科学哲学・科学技術社会論

2014年4月29日(火) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*矢島 道子(東京医科歯科大学教養部)、青木 滋之(会津大学文化研究センター)、山田 俊弘(千葉県立船橋高等学校)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

18:15 〜 19:30

[MZZ45-P02] 地球惑星科学と科学哲学の連携自己実験のレビュー

*熊澤 峰夫1上野 ふき1 (1.名古屋大学)

キーワード:全地球史, 科学現象の科学, 科学の科学, 科学哲学, 将来設計

【地球史と科学哲学の関係】全地球史解読「重点領域研究(1996-1998)」の立案において、丸山茂徳らと熊澤は、地球の歴史をその形成から現代まで、同じスケールの時間分解能で把握するにはどうするか検討した。それで地球史の時間軸上にいくつかの事件を設定して、それぞれの位置付けや意味を整理してみた。そのとき「現在」を「ヒトが科学を始めて地球・宇宙の歴史と摂理を探りはじめた地球史上の第7大事件」と設定した。当然、ヒトとは何か?科学とは?摂理とは?など科学では簡単に答えられそうにないが、われわれが多大な関心をもつ問いに波及する。このような問は大抵IP(ill-posed=不良設定)問題であって、科学者は積極的に棚上げするが、科学とは何かという問いには答えられなければならないと思う。しかし「真理の探究だ」などという素朴な説明には、「その真理とは何か?」と聞かれて的確に答えられる科学者は多くはない。これはうれしいことではない。また、科学の発展が、人間の生存をおびやかす可能性も指摘されているので、これにも対処したい。
科学をその外から理解しようとするのがメタ科学、あるいは科学哲学(philosophy of science)とされる。しかし、地球惑星科学~全地球史解読の立場からすると、ヒトは地球環境と生命現象の共進化の産物であり、科学現象(つまり、科学と言う自然認識の方法やその意味)は科学で理解したい。つまり「科学の科学」である。そこで都城秋穂逝去の2008以来、こういう問題を科学哲学者の戸田山和久と検討を開始し、2009からは戸田山スクール(彼とその周辺の科学哲学者たち)と地球科学者の連携共同研究を企画した。こうして2010年のJpGU以来、科学史と科学論にかかわる学会発表を継続してきた。2011からは、JSPS科学研究補助金「地球惑星科学の哲学の基盤構築」(基盤研究B人文学・青木滋之代表)を得て文理連携の活動を試行した。その具体的研究成果の一部は、Nagoya Journal of Philosophyという実質和文の学術誌のvol.10に、特集「地球惑星科学の科学史」として出版済みである。科学論に関わる成果は次の特集号2巻で刊行予定である。
【現状認識】個別研究の個別成果はそれでよい。本質的な問題は、この「科学の科学」、すなわち、世界が世界を認識する自己言及系としての科学の意味の理解は、将来のヒトの「生き継ぎ」に関わる実務的要素までを含む喫緊究極の課題である。何千年にも亘る哲学の伝統や宗教の教義が生きている現代社会において、統一的な結論が出せるとは思えない。事実、共同研究の最中では、些細なことから本質的と思える重大課題まで、意見の激しい背反、対立を体験した。和気アイアイとよい共同研究ができました、と言うのは欺瞞である。むしろこの体験を通じて知った分野間の不整合性こそが、「最重要の研究課題」であり、かつ「ヒトが自然を知り生き継いで行く基礎資源」であると確信できたのである。このような報告に「客観性」を期待することは、現時点ではIP(ill-posed)問題だ。しかし研究を支える多様な異質の人格の相互作用と連携が「集団知~swarm intelligence」としてただよって進化変遷する状態にあることは、望ましいこととして広く知られており、その状態確保には積極的な意義があると考える。とりわけ現在のヒトは、自己責任において己の生き継ぎに向けて、予測設計制御の試行錯誤で対処する時代にはいっていることに留意する。本研究によって、上記の認識に確信を深めたことが成果の一つである。これを「現実の環境問題への現実的対処の実務としての研究」とうまく接続させることが望ましいと考える。
本研究を通じて得た具体的な方策を提案する。それは、大学院教育における人文社会系と理工系をまたぐ「副専攻制の普及と充実」である。副専攻制に反対する教員もいる。しかし、これは全分野の学門が現実社会に敬意と実益の両方の期待をもって積極的に受け入れられて、知的な役割を果たせるための積極的な提案である。
【この報告の意図】地球惑星科学(の限られた分野だが)と科学哲学の連携模索のマネージメントを担当したわれわれ2名が、この異分野交流の共同自己実験について、「主観を承知で」そのポジティブな意義を率直に報告しておくべきだと考えた。このような趣旨で、過去数年間の研究の推移とその「主観的」理解を報告し、将来のためにポスターセッションの場でこの問題に関心のある諸氏と議論の機会をもちたい。