10:00 〜 10:30
★ [O01-03] 東日本大震災の教訓と今後の安全教育
キーワード:安全教育
要約:東日本大震災をはじめとした学校における事件・事故災害の現状と課題、さらにその教訓を踏まえた今後の安全教育や安全管理について、文部科学省の取り組みや今後の方向性等について述べる。1.学校における事件・事故災害の現状と課題学校において児童生徒が生き生きと学習や運動等の活動を行うためには、その安全の確保が保障されることが不可欠の前提である。さらに、児童生徒は守られる対象であることに留まらず、その生涯にわたり自らの安全を確保することのできる基礎的な素養を育成するとともに安全な社会の構成者としての自覚と責任を促していかなければならない。東日本大震災では、津波によって600人を超える児童生徒、教職員が犠牲となった。未曾有の大災害から児童生徒、教職員の命や学校の安全を守るための教訓を導き出し、今後に備えることは重要なことであるが、一方で日常的に発生している学校での事件・事故災害についても児童生徒や教職員の命を守り安全を確保する上では同様に重要なことである。独立行政法人日本スポーツ振興センターが行っている学校管理下における負傷・疾病等に関する災害共済給付業務データによると、近年、児童生徒数の減少に伴い発生件数は緩やかに減少しているが、それでも平成24年度には112万件発生しており、発生率は6.6%である。ここ10数年間、発生率は6~7%で推移しており、負傷事案の傾向も大きな変化は見られない。死亡見舞金、供花料は平成16年以降100件から150件の間を推移していたが平成24年に初めて100人を切っている。(なお、この中に東日本大震災による犠牲者の数は含まれていない。)さらに、通学途中の死亡事故は毎年100件を超えており、通学を含む学校管理下において毎年150人前後の児童生徒が命を落としている実態を注視する必要がある。安全管理の側面として、平成21年に改正された学校保健安全法の施行により各学校において「学校安全計画」や「危険等発生時対処要領」が整備されてきているが、計画の実施状況や指導の効果測定、適切な対処に必要な教職員の資質向上などの課題が指摘されている。安全教育については、学習指導要領総則において教育活動全体を通じて適切に行うよう示されたものの、指導内容や児童生徒の発達の段階に応じた系統化、指導のための資料、指導する時間の確保などの課題が指摘されている。2.学校安全の推進に関する計画 学校保健法第3条に基づき、「学校安全の推進に関する計画」が平成24年4月に閣議決定されている。安全管理については、学校内における安全体制の整備充実や家庭・地域との連携体制の確立を目指している。さらに、教職員の研修充実、大学での教職課程における履修についても検討していくこととしている。安全教育では、単に知識を習得させるのではなく、主体的な行動がとれる児童生徒の育成を図るため、指導時間の確保や内容の整理等をすることとしている。さらにこの計画では、より実証的な施策推進を図るため、セーフティプロモーションの概念を取り入れ、様々な角度から検証、検討を行うとともに優れた学校等での取り組みを積極的に発信していくこととしている。3.安全教育の目標 「生きる力をはぐくむ学校での安全教育」(H22,3文部科学省)では、安全教育の目標を次のように示している。学校における学校における安全教育の目標は概説すると、日常生活に全般における安全確保のために必要な事項を実践的に理解し、自他の生命尊重を基盤として、生涯を通じて安全な生活を送る基礎を培うとともに、進んで安全な社会づくりに参加し、貢献できるような資質や能力を養うことにある。具体的には次の三つの目標が挙げられる。ア 日常生活における事件・事故災害や犯罪被害等の現状、原因及び防止方法について理解を 深め、現在及び将来に直面する安全の課題に対して、的確な思考・判断に基づく適切な意志決定や行動選択ができるようにする。イ 日常生活の中に潜む様々な危険を予測し、自他の安全に配慮して安全な行動をとるとともに、自ら危険な環境を改善することができるようにする。ウ 自他の生命を尊重し、安全で安心な社会づくりの重要性を認識して、学校、家庭及び地域社会の安全活動に進んで参加・協力し、貢献できるようにする。この目標は東日本大震災の教訓であり今後の防災教育の視点として示されている「主体的に行動する態度」と合致するものであり、今後の安全教育を推進する上での支柱となるものである。