日本地球惑星科学連合2014年大会

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[O-06_30PM1] 日本のジオパーク

2014年4月30日(水) 14:15 〜 15:59 メインホール (1F)

コンビーナ:*渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、住田 達哉(産業技術総合研究所)、座長:柴田 伊廣(室戸ジオパーク推進協議会)

14:41 〜 15:07

[O06-10] 下北半島ジオパーク構想「4つの海がもたらす恵みと島弧の4要素が集積する大地」

*新谷 智文1宮下 順一郎1植田 勇人1伊藤 道郎1光野 義厚1 (1.下北半島ジオパーク構想推進協議会)

キーワード:日本ジオパーク, 4つの海, 4つの地質要素, 下北愛(郷土愛), 信仰心

【申請地域の紹介】下北半島は、青森県の太平洋側から北に突き出した本州最北端の地域にあり、東は太平洋、西は日本海、南は陸奥湾、北は津軽海峡と四方を趣の異なる海域に囲まれた1市1町3村を含むエリアである。エリア内には、恐山の金鉱床やカルデラ地形、仏ヶ浦のグリーンタフ、田名部平野北海岸の第四紀層の大露頭、尻屋崎の付加体など、日本列島の基本構造を形づくる主要な4つの要素を学べる地質資源のほか、江戸時代に北前船により上方文化の影響を受けた歴史・文化資源や海峡を挟んだ蝦夷地など北方域との交流の歴史、大正初期に当地域の繁栄を支えた黒鉱鉱床である安部城鉱山跡などの産業資源、ヒト以外の霊長類で世界最北に生息しているニホンザルや津軽海峡に引かれる動植物の分布境界であるブラキストン線、および日本海からの津軽暖流や冬の季節風と太平洋の寒流や「やませ」に育まれた対照的な生態系など、多分野において価値の高い資源が豊富に存在している。【日本ジオパークネットワークへ加盟申請する理由】当地域には大学や公設博物館が存在しないため、これまで地域住民は高等教育に触れる機会に恵まれず、地域の宝である資源の価値や学術的な重要性について十分な知識を持つことができず、郷土への愛着が育みづらい環境であった。しかし、ジオパーク活動によって地域住民が高等教育に触れる機会が生まれ、地域資源の素晴らしい意義を認識したことで、郷土への愛着「下北愛」が醸成されつつある。今後、ジオパーク活動により、次代を担う子どもたちが地域資源に直接触れ、学び、楽しむことでこの地の価値や重要性を認識し、次代の地域づくりへの意欲を高める効果を期待することが、日本ジオパークネットワークへの加盟を申請する理由である。【下北半島ジオパーク構想のテーマ及びストーリー】日本列島は大局的には、主に付加体でできた非火山性山地、活火山が並ぶ脊梁山脈、それらの間の第四紀層に埋積された堆積盆、およびグリーンタフからなる日本海側の山地という地形・地質の4つの基本要素で構成されている。当地域は日本で唯一、太平洋と日本海の両海に接するため、日本列島を形成する大地の大局的な4大要素が一ヶ所に集約されているといえる。また、四方を趣の異なる4つの海域に囲まれている地域性を活かし、それぞれの海域特性に合った魚種・漁業方法が発展し、漁業が地域経済の根幹を支える業種となっているほか、江戸期の北前船がもたらした文化なども海によってもたらされたものと言える。このことから、当地域全体のテーマを「4つの海がもたらす恵みと島弧の4要素が集積する大地」と設定し、地質的・文化的および地理的要素により「東海岸ゾーン:太平洋からの贈り物」、「田名部平野ゾーン:海と陸のせめぎあい」、「恐山・むつ燧岳火山ゾーン:火山と温泉の恵み」、「西海岸ゾーン:裂ける大地」の4つのゾーンとそれぞれの特徴を示すサブテーマも設定した。【JGNへの貢献】大学や公設博物館等の高等教育機関が存在しない地域において、「ジオパーク」活動が生涯学習や子どもたちの高等教育に触れる機会づくりにどこまで貢献できるのかについて、JGN中で課題を共有し、意見交換や連携を深めることで、ジオパーク本来の役割や価値を高めることに貢献したい。さらに、日本では古くから山々や大木、岩などに神が宿ると考えられ信仰の対象として崇め畏れてきたが、当地域には「恐山」や「仏ヶ浦」といった地域住民の信仰の対象とされる場所もあり、恐山では「イタコの口寄せ」が行われ、亡き人の声を聞くために全国各地からの訪問客が後を絶たない。このことから当地域では、地質学的視点だけではなく、日本人が持つ信仰心という目に見えないテーマも取り込んだ「ジオパーク」を創り上げていくことで、JGNへ貢献していきたい。【まとめ】当地域には、他の地域には存在しない特異な地質があるわけでも、他を圧倒するほど重要な地質資源が存在するわけでもない。しかし、当地域は国内で唯一、太平洋と日本海という2つの海に接しているため、日本列島の海と陸の双方を俯瞰的に学べる利点がある。また半島という中において、住民一人ひとりに「同じ下北」という感情が育まれている。住民自らが地域の宝を守り磨き上げること、および来訪者を迎える中で地域の宝の価値を再認識することで、地域に誇りを持ち地元を愛する気持ちが醸成され、それが後世へと続くことによって、郷土を愛する気持ち「下北愛」の深まりが、地域をより魅力的に変え、他地域から見える「下北」の魅力向上につながっていく。地域にある資源が持つ意義を住民が認識し、地域の魅力を再発見するとともに、新たな視点に立った観光振興策を行う気運を更に高めるために、当地域は日本ジオパークネットワークへの新規加盟を申請するものである。