日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-06_30PM2] 日本のジオパーク

2014年4月30日(水) 16:15 〜 16:51 メインホール (1F)

コンビーナ:*渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、住田 達哉(産業技術総合研究所)、座長:渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

16:15 〜 16:41

[O06-13] 立山黒部ジオパーク構想「38億年×高低差4000m! 体感しようダイナミックな時空の物語」

*増渕 佳子1大野 博美1丹保 俊哉1藤田 将人1石須 秀知1竹内 章1中尾 哲雄1堀内 康男2 (1.立山黒部ジオパーク推進協議会、2.立山黒部ジオパーク支援自治体会議)

キーワード:立山黒部ジオパーク構想

富山県東部地域(9市町村)の大地を地史や地理に関わる数字で端的に表現すると、「38億年と4000m」という値になる。所属する各地区で取り組まれてきた様々なガイド活動を通してこの数字のスケール(時空間)を「伝え・守り・活かす」。これこそが立山黒部ジオパーク構想の神髄である。本地域は日本列島というアジア大陸の活動的縁辺にあって、大陸の断片である飛騨帯に属する本地域は、中生代からの断続的な火成活動と地殻変動、そして気候変動の影響下で、様々な内的・外的営力が作用した結果、深さ1000mの深海湾と標高3000m級の急峻な山脈がコンパクトに収束したダイナミックかつ独特の地形・地質を有する場所である。本地域はまた、約80万年前という世界で最も新しい花崗岩が露出するほどに急速な地殻変動が行われている地域でありながら、約38億年前という太古の地球の記憶を呼び起こす鉱物や古生代における亜大陸同士の衝突の痕跡を数多く残していることなど、「地学の百科事典」ともいうべき多様な物象・事象を内包している。さらに、こうした地形・地質の要因が複合的に絡み合い、現世では、極東アジアの南限として現存する氷河から海底に至り湧水として循環する水の動きに象徴されるとおり、他地域に類を見ない自然環境・生態系が成り立っている。本地域の魅力はなんといっても風土に起因した独特で多様性に満ちた自然環境とそれに育まれた大地の恵み、海の幸である。本地域では早くから、これらの資源が大切な守るべきものとしての理解が進み、全国に先駆けて成立したナチュラリスト制度などにより保護保全と普及啓発がおこなわれ多くの成果・実績を上げている。とくに、数多くのガイド組織の活発な活動は、地域内にある北アルプスの主稜から富山湾の臨海平野部を網羅するほどである。しかし、ふだん享受できている数々の恩恵のかげには上述の大地の物語があることを理解している住民、旅行者は多いとは言えない。一方では、地域学の調査活動を行ってきた住民の中には、大地の重要さに気づき、その魅力を知りたいという思いが着実に萌芽し、力強く成長を始めている側面もある。われわれは、このような課題や意識の昂揚を踏まえ、「風土こそ地域形成の原点」と考え、ジオパーク活動を通して地域の潜在的魅力を掘り起こし、新しい地域経済循環の歯車(連携)の組み合わせを創造しようとしている。そしてその中心には「人と人が作り出す連携」が必要であると考えている。我々はそのためのどんな枠組みにも規定されず、新しい連携の形を求めてどん欲に理想を追い求めることができるパイオニアと、それを地域社会・地域行政の連携によって支える仕組みを作りだした。本地域は日本における民間と行政の協業によるジオパーク経営を持続させ、その在り方を発信していきたい。