18:15 〜 19:30
[O06-P09] ジオパークとエコパークの共存における課題―白山手取川ジオパークと白山エコパークの事例―
キーワード:白山手取川ジオパーク, 白山エコパーク, ユネスコ, 共存
白山手取川ジオパークと白山エコパークとは、その一部のエリアが重複している。この二つの「パーク」のエリア重複がもたらす可能性があるさまざまな課題を調整し、共存している状況を円滑に運営するために、白山手取川ジオパークの事務局が白山エコパークの事務局を担当することとなった。本発表では、ジオパークとエコパークの重複認定が、運営や地域にもたらす障害について検討し、その対策としての事務局機能の統合運用の可能性を指摘したい。
ジオパークと生物圏保存地域(通称「ユネスコエコパーク」)は、いずれもユネスコが関与する国際的な自然保全プログラムである。その基本的な方向性も同じような方向性を指向している。特に、1995年のセビリヤ戦略以降のエコパークは、それ以前の保全・研究のみを指向していたものから、移行地域を設定することで地域経済の持続性を支援する目的を有するようになり、「保全・研究教育・ジオツーリズム」を三本の柱とするジオパークと類似性が高いものとなった。日本においては、1980年に白山地域を含む4地域が旧タイプのエコパークに登録されたものの、国内的には認知度が低く、積極的な活用が行われてこなかった。2008年にジオパークの活動が国内で活発化したのち、2011年からエコパークへのセビリヤ戦略の導入が始まり、新規の登録と旧登録地域の新体制への移行が始まっている。
白山地域においては、1980年に白山山頂部の国立公園特別保護地域が白山エコパークとして登録されたが、行政レベルにおいても、地域住民レベルにおいても、その認知度は低く、活用もなされてこなかった。2009年からジオパーク認定に向けた活動が始まり、2011年に白山手取川ジオパークとして日本ジオパークに認定された。ジオパークのエリアは白山市の全域であるが、その一部に白山エコパークの核心地域の大部分を包括している。この過程において、白山エコパークの存在が再認識され、また、2012年から日本ユネスコ国内委員会MAB分科会の働きかけで白山エコパークのセビリヤ戦略対応が始まった。すなわち、白山市においては、行政レベルにおいても住民レベルにおいても、ジオパークに対する認知と活動とが先行し、エコパークが後を追う形となっている。
地域における生態系や生物多様性は、地域のジオダイバーシティなしでは存在しえない。一方で、ジオパークの構成要素には地域生態系が含まれることに加え、ジオパークから提供されるさまざまな地域の産物は、その多くが地域生態系の生態系サービスとして提供される。その上、二つの「パーク」の目的の指向性、あるいは地域資源として用いるものに大きな差がないことから、重複認定地域において二つの「パーク」を厳密に仕分けすることは本質的に困難である。一方で、それぞれの「パーク」の運営主体が異なるとともに、「パーク」の登録範囲も完全一致や包括関係にあるわけでないことから、制度上はある程度の仕分けをすることが求められる。このことは、「パーク」の運営や認定地域の住民に対して様々な混乱と課題をもたらすことが予想される。以下に示すような課題群を克服することが、二つの「パーク」の共存に不可欠であろう。
パーク内部での課題
・地域住民に対する二つの「パーク」の学術的関係の周知
・地域住民に生じる認知上の混乱の調整
・運営組織間の調整
・ブランド使用ルールの調整
・予算と人的資源の活用方針の調整
・個別活動成果の帰属の調整
パーク外部への課題
・来訪者に対する二つの「パーク」の学術的関係の普及
・宣伝広告およびブランド管理の調整と連携
個別の「パーク」運営組織が、それぞれに運営方針を策定し、それを「パーク」間で調整し、持ち帰って再調整することは、これらの課題の解決を困難にし、運営の障害となりかねない。白山地域においては、活動が先行した白山手取川ジオパークの事務局(白山市観光推進部に設置)が、白山エコパーク(4県7市村に跨る)全体の事務局を兼務することにより、ジオパークとエコパークの運営方針の統合を高いレベルで実現するとともに、有機的な連携の構築を進め、1+1を2以上にすることを目指している。
ジオパークとエコパークの重複認定は世界で数例が見られているが、その外部への情報発信などでは有機的な連携統合は認められない(運営上の連携の有無については、今後の調査が必要)。国内においても、白山手取川ジオパークの他に、同じく白山エコパークと重複する勝山ジオパーク、エコパークに申請中の南アルプスジオパークが同様の状況にある。ジオパークがユネスコのプログラムに昇格すること、両パークへの取り組みが世界各地で活発に進められていることから、重複認定のケースは増加することも予想される。白山地域における二つの「パーク」の共存を目指す取り組みは、世界各地の同様の地域に対するケーススタディになりうると考えている。
ジオパークと生物圏保存地域(通称「ユネスコエコパーク」)は、いずれもユネスコが関与する国際的な自然保全プログラムである。その基本的な方向性も同じような方向性を指向している。特に、1995年のセビリヤ戦略以降のエコパークは、それ以前の保全・研究のみを指向していたものから、移行地域を設定することで地域経済の持続性を支援する目的を有するようになり、「保全・研究教育・ジオツーリズム」を三本の柱とするジオパークと類似性が高いものとなった。日本においては、1980年に白山地域を含む4地域が旧タイプのエコパークに登録されたものの、国内的には認知度が低く、積極的な活用が行われてこなかった。2008年にジオパークの活動が国内で活発化したのち、2011年からエコパークへのセビリヤ戦略の導入が始まり、新規の登録と旧登録地域の新体制への移行が始まっている。
白山地域においては、1980年に白山山頂部の国立公園特別保護地域が白山エコパークとして登録されたが、行政レベルにおいても、地域住民レベルにおいても、その認知度は低く、活用もなされてこなかった。2009年からジオパーク認定に向けた活動が始まり、2011年に白山手取川ジオパークとして日本ジオパークに認定された。ジオパークのエリアは白山市の全域であるが、その一部に白山エコパークの核心地域の大部分を包括している。この過程において、白山エコパークの存在が再認識され、また、2012年から日本ユネスコ国内委員会MAB分科会の働きかけで白山エコパークのセビリヤ戦略対応が始まった。すなわち、白山市においては、行政レベルにおいても住民レベルにおいても、ジオパークに対する認知と活動とが先行し、エコパークが後を追う形となっている。
地域における生態系や生物多様性は、地域のジオダイバーシティなしでは存在しえない。一方で、ジオパークの構成要素には地域生態系が含まれることに加え、ジオパークから提供されるさまざまな地域の産物は、その多くが地域生態系の生態系サービスとして提供される。その上、二つの「パーク」の目的の指向性、あるいは地域資源として用いるものに大きな差がないことから、重複認定地域において二つの「パーク」を厳密に仕分けすることは本質的に困難である。一方で、それぞれの「パーク」の運営主体が異なるとともに、「パーク」の登録範囲も完全一致や包括関係にあるわけでないことから、制度上はある程度の仕分けをすることが求められる。このことは、「パーク」の運営や認定地域の住民に対して様々な混乱と課題をもたらすことが予想される。以下に示すような課題群を克服することが、二つの「パーク」の共存に不可欠であろう。
パーク内部での課題
・地域住民に対する二つの「パーク」の学術的関係の周知
・地域住民に生じる認知上の混乱の調整
・運営組織間の調整
・ブランド使用ルールの調整
・予算と人的資源の活用方針の調整
・個別活動成果の帰属の調整
パーク外部への課題
・来訪者に対する二つの「パーク」の学術的関係の普及
・宣伝広告およびブランド管理の調整と連携
個別の「パーク」運営組織が、それぞれに運営方針を策定し、それを「パーク」間で調整し、持ち帰って再調整することは、これらの課題の解決を困難にし、運営の障害となりかねない。白山地域においては、活動が先行した白山手取川ジオパークの事務局(白山市観光推進部に設置)が、白山エコパーク(4県7市村に跨る)全体の事務局を兼務することにより、ジオパークとエコパークの運営方針の統合を高いレベルで実現するとともに、有機的な連携の構築を進め、1+1を2以上にすることを目指している。
ジオパークとエコパークの重複認定は世界で数例が見られているが、その外部への情報発信などでは有機的な連携統合は認められない(運営上の連携の有無については、今後の調査が必要)。国内においても、白山手取川ジオパークの他に、同じく白山エコパークと重複する勝山ジオパーク、エコパークに申請中の南アルプスジオパークが同様の状況にある。ジオパークがユネスコのプログラムに昇格すること、両パークへの取り組みが世界各地で活発に進められていることから、重複認定のケースは増加することも予想される。白山地域における二つの「パーク」の共存を目指す取り組みは、世界各地の同様の地域に対するケーススタディになりうると考えている。