日本地球惑星科学連合2014年大会

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[O-06_30PO1] 日本のジオパーク

2014年4月30日(水) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、住田 達哉(産業技術総合研究所)

18:15 〜 19:30

[O06-P13] ジオパークにおける住民参加型散策コース策定の効果と課題 ‐山陰海岸ジオパークの例‐

*松原 典孝1先山 徹1 (1.兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 ジオ環境研究部門)

キーワード:ジオパーク, 山陰海岸ジオパーク, ジオパーク散策モデルコース, 住民参加

ジオパーク活動において重要なことの一つが,ジオパークの住人がジオパークの理念および自らのジオパークのテリトリーとその特徴を理解することである.そのためには,住民が積極的にジオパーク活動に参加することが重要である.しかし,行政主体で地域活性化策を行うことが多い日本においては,ジオパーク活動に住民が主体的に参画することが困難なことも多い.今回,ジオパークテリトリー内の住民およびジオパークに関わる官,学の一層の連携・協力体制強化と相互理解を図るため,住民と協働でジオパークの散策コースを策定した.
<山陰海岸ジオパーク散策モデルコース>
 ジオパークにおいては,観光客等がジオサイトや周辺の見どころをスムーズに周ることができるルート設定や地図の作成等が求められる.そこで,歩いて半日~1日でその地域の特徴を楽しめる散策モデルコースを作成した.コースには地質学的要素を持つ箇所を中心にそれぞれ12前後の見どころを配し,それらを歩いて順番に周れるようにした.
 平成24年度までに作成したコースは京都府,兵庫県,鳥取県の3府県で20コースとなった.
<散策モデルコース策定の流れ>
 散策モデルコース策定にあたっては,①山陰海岸ジオパーク推進協議会学術部会が,ジオパーク活動が盛んな地域や,作成の要望がある地域から候補地を選定,②地域のガイドや観光関係者,地域リーダー,地域の行政担当者等と学術部会メンバーが調査チームを作り,コース案を作成,③調査チームが現地を調査し,時間やコースの面白さ,安全性等を確認,④学術部会でマップを作成,⑤作成案を調査チームのメンバーが内容を確認,の5つの手順を踏んだ.内容の作成は学術部会メンバーが担当するため,一部内容が難しくなる恐れがあった.そこで,⑤の段階でSNSを活用,作成した図や文言等をFacebookに投稿し地域の住民等から広く意見を集め,適宜修正することで,迅速に広く一般に理解できる内容に修正することができた.
<住民参加型散策コース策定の効果と課題>
 実際に現場で案内しているガイドや,地域の住民が参画することで,より地域で使いやすい散策コースを作成することができる.特に,②,③の過程では,実際に現場でガイドしている地域住民等が自らの経験に基づきルートを提案することで,より実情に即したルート設定を実施することができた.また,副次的な効果として,地域住民とともに内容を作成することで,各見どころの科学的な情報等を地域住民が科学者と共有することができた.
 以上のように,住民の積極的なジオパーク活動への参画および知識の共有に効果があったものと考えられる住民参加型散策コース策定であるが,運用上いくつかの問題が見つかった.たとえば,観光客が少ない地域やガイドが存在しない地域では十分活用されていないことも問題の一つである.今後,散策モデルコースを利用する観光客等からも積極的に意見を得るなどして,観光客と地域住民双方がより利用しやすい散策モデルコースとなるよう継続して調査・修正していく必要がある.