18:15 〜 19:30
[PCG11-P05] 探査機搭載用粒子分析器開発に向けた較正システムの構築
キーワード:較正システム, イオンビームライン, 超熱的イオンビーム, 粒子分析器, 磁石型質量分析器, 遠隔制御
地球惑星電磁気圏における物理現象の理解を深める上で、中性大気の変動およびプラズマの運動と両者の相互作用を考えることは極めて重要であり、探査機を用いた詳細な観測が必要とされている。そこで我々は、惑星大気を対象とする新規技術を用いた探査機搭載用粒子分析器の開発を行っている。開発の進行に伴い分析器の較正装置が必要とされる。
我々が開発を行っている粒子分析器の較正は、宇宙空間を模擬したチェンバー内に分析器を置き、特性の明確なイオンビームを照射し、それに対する分析器の応答を調査することにより行われる。我々は、すでに10keVから150keVまでのエネルギー範囲のイオンビームを照射する装置(ビームライン)の構築および整備を行っている。しかし開発中の分析器は惑星大気の観測を行うことを想定したものであり、較正には数十eVの超熱的イオンビームを照射する必要がある。具体的には10eV/chargeから10keV/chargeまでのエネルギー範囲において、H+、He+、O+、N+、Ar+といった単原子イオンビームに加え、N2+、O2+、CO2+のような分子イオンビームを照射することが可能なビームラインが必要とされる。そこで我々は10keV/charge~150keV/chargeのビームラインに加え、新たに10eV/charge ~10keV/chargeの超熱的エネルギービームラインの構築、整備を進めてきた。最終的にはそれぞれを統合制御する較正システムを構築する予定だが、まずは後者の構築、整備を行った。
超熱的エネルギービームラインは主に6つの部位(イオン源、電磁石型質量分析器、ビーム径拡張器、主加速器、真空チェンバー、真空用ターンテーブル)から構成されている。ガスボンベからイオン源に導入された中性ガスは、フィラメントから放出された熱電子によってイオン化される。発生したイオンは初期加速され、電磁石型質量分析器によってイオン種が弁別される。イオンはビーム径拡張器において垂直方向の電場の二次元ラスタ走査によってその径が拡大され、さらに加減速を経て平行化される。平行化されたイオンビームは所定のエネルギーまで加減速され、真空チェンバーに導入される。一方、較正する分析器は真空チェンバー内のターンテーブルの上に置かれ、ターンテーブルの方位角、仰角を制御することで分析器へのビームの入射角度を変化させることができる。また、具体的に以下のパラメータを制御することでビーム特性を変化させることができる。(1)熱電子フラックスと初期加速電圧、(2)電離粒子の初期加速、(3)電磁石型質量分析器の磁場強度、(4)ビーム径拡張用ラスタ走査・平行化電場、(5)主加減速電場、(6)ターンテーブルの方位角と仰角。分析器の較正を効率よく行うため、我々は1つのプログラム上で一元管理および遠隔操作できる制御システムの構築も進めている。機器のインターフェースとしてRS-232、USB、無線LANを用いて遠隔制御を行う。プログラミング言語はLabVIEWを使用する。また、複数のビームライン・真空装置での真空度を多点・同時監視し、異常時には警告メールの自動配信を行う真空度監視・警告システムを導入した。
超熱的エネルギービームラインにおいてターンテーブルシステム以外の較正システムは構築されており、十分に拡大、平行化された所定のエネルギーのイオンビームが真空チェンバーに導入可能なことが確認されている。実際にビーム強度を取得する2次元MCP計測系を整備し、生成したビーム強度の測定を行った。本発表では、構築したビームラインの概要と生成したビーム強度の測定結果について報告する。
我々が開発を行っている粒子分析器の較正は、宇宙空間を模擬したチェンバー内に分析器を置き、特性の明確なイオンビームを照射し、それに対する分析器の応答を調査することにより行われる。我々は、すでに10keVから150keVまでのエネルギー範囲のイオンビームを照射する装置(ビームライン)の構築および整備を行っている。しかし開発中の分析器は惑星大気の観測を行うことを想定したものであり、較正には数十eVの超熱的イオンビームを照射する必要がある。具体的には10eV/chargeから10keV/chargeまでのエネルギー範囲において、H+、He+、O+、N+、Ar+といった単原子イオンビームに加え、N2+、O2+、CO2+のような分子イオンビームを照射することが可能なビームラインが必要とされる。そこで我々は10keV/charge~150keV/chargeのビームラインに加え、新たに10eV/charge ~10keV/chargeの超熱的エネルギービームラインの構築、整備を進めてきた。最終的にはそれぞれを統合制御する較正システムを構築する予定だが、まずは後者の構築、整備を行った。
超熱的エネルギービームラインは主に6つの部位(イオン源、電磁石型質量分析器、ビーム径拡張器、主加速器、真空チェンバー、真空用ターンテーブル)から構成されている。ガスボンベからイオン源に導入された中性ガスは、フィラメントから放出された熱電子によってイオン化される。発生したイオンは初期加速され、電磁石型質量分析器によってイオン種が弁別される。イオンはビーム径拡張器において垂直方向の電場の二次元ラスタ走査によってその径が拡大され、さらに加減速を経て平行化される。平行化されたイオンビームは所定のエネルギーまで加減速され、真空チェンバーに導入される。一方、較正する分析器は真空チェンバー内のターンテーブルの上に置かれ、ターンテーブルの方位角、仰角を制御することで分析器へのビームの入射角度を変化させることができる。また、具体的に以下のパラメータを制御することでビーム特性を変化させることができる。(1)熱電子フラックスと初期加速電圧、(2)電離粒子の初期加速、(3)電磁石型質量分析器の磁場強度、(4)ビーム径拡張用ラスタ走査・平行化電場、(5)主加減速電場、(6)ターンテーブルの方位角と仰角。分析器の較正を効率よく行うため、我々は1つのプログラム上で一元管理および遠隔操作できる制御システムの構築も進めている。機器のインターフェースとしてRS-232、USB、無線LANを用いて遠隔制御を行う。プログラミング言語はLabVIEWを使用する。また、複数のビームライン・真空装置での真空度を多点・同時監視し、異常時には警告メールの自動配信を行う真空度監視・警告システムを導入した。
超熱的エネルギービームラインにおいてターンテーブルシステム以外の較正システムは構築されており、十分に拡大、平行化された所定のエネルギーのイオンビームが真空チェンバーに導入可能なことが確認されている。実際にビーム強度を取得する2次元MCP計測系を整備し、生成したビーム強度の測定を行った。本発表では、構築したビームラインの概要と生成したビーム強度の測定結果について報告する。