日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG38_1PM1] 惑星大気圏・電磁圏

2014年5月1日(木) 14:15 〜 16:00 423 (4F)

コンビーナ:*今村 剛(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部)、関 華奈子(名古屋大学太陽地球環境研究所)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、高橋 芳幸(惑星科学研究センター)、深沢 圭一郎(九州大学情報基盤研究開発センター)、中川 広務(東北大学 大学院理学研究科 地球物理学専攻太陽惑星空間物理学講座 惑星大気物理学分野)、座長:関 華奈子(名古屋大学太陽地球環境研究所)

14:45 〜 15:00

[PCG38-17] 多流体MHDシミュレーションに基づいた火星電離圏CO2+鉛直高度分布にイオン種間衝突がおよぼす影響の研究

*小山 響平1関 華奈子1寺田 直樹2寺田 香織2 (1.名古屋大学 太陽地球環境研究所、2.東北大学大学院理学研究科)

キーワード:火星, 電離圏, 大気散逸, 多流体磁気流体シミュレーション

地球型惑星におけるCO2とN2と地殻の組成重量比の比較から、宇宙空間への大気散逸の重要性が指摘されている[Chassefiere et al., 2006]。一方で、既存の大気散逸機構では、重いCO2を流出させるのは容易ではないと考えられてきた。ところが、Mars Express探査機により、多量のCO2+イオンの散逸が観測され[Carlsson et al., 2006]、その散逸機構の解明が急務となっている。CO2+の散逸を大きく左右する要素の一つに、電離圏におけるCO2+密度の高度分布がある。電離圏内の化学反応は、多成分(Multi-species) MHDなどによりすでに研究されているが、多成分MHDがイオン種毎に扱うのは密度のみで速度は全イオン種同じと近似するので、イオン流体同士の速度差は再現できず、低高度から上層へのCO2+の輸送の再現性はよくなかった。イオン種毎の密度分布を正確に記述するには、各イオン種を別々の流体として取り扱う多流体(Multi-fluid)MHD近似が必要となる。開発の方針としては、化学反応の効果を丁寧に扱ったTerada et al.[2009]による多成分コードを多流体MHDの先行研究であるNajib et al.[2011]の方程式を参考に多流体MHDに改良した。本研究で開発した多流体MHDでは、イオン種間(ion-ion)衝突の効果を含めることも可能であるため、次に、火星電離圏におけるCO2+密度の高度分布に焦点をあて、その分布にion-ion衝突が与える影響を調べた。ion-ion衝突の効果を調べるため、多流体MHDでイオン衝突を含めた場合(Case 1)、イオン衝突を含めない場合(Case 2)、および、多成分MHDに相当する全イオン種が同じ鉛直速度を持つ場合(Case3)の3つのシミュレーションを行い、準定常状態に達した結果を比較した。高度460kmでのCO2+密度は、Case1:82, Case2:190, Case3:11 cm-3で、従来の多成分MHDがCO2+の高高度側へ輸送を過小評価していることが判明した。Vikingによる電離圏の観測結果との比較からは,適度なion-ion衝突を含んだCase1が最もよく観測結果を再現していた。以上から、多流体MHDは低高度からの二酸化炭素イオンの輸送をより現実的に再現可能であり、火星からのCO2+散逸を調べるためには、適切なion-ion衝突の導入が重要であるとの結論を得た。本発表では、イオン流体ごとの速度とイオン同士の衝突が、CO2+の鉛直密度分布に与える影響を報告する。