17:30 〜 17:45
[PCG38-P03_PG] 巨大惑星を想定した雲対流の 2 次元数値計算
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:巨大惑星, 湿潤対流, 数値計算, 雲解像モデル
巨大惑星には活発な積雲が存在することが知られている. 巨大惑星の雲対流は, 地球大気の場合と同様に, 大気の成層構造と物質分布の決定に重要な役割を担っ
ていると考えられている. しかし, 厚い雲に覆われた巨大惑星の雲層を遠隔観測するのは困難であり, 巨大惑星における雲対流と平均的大気構造との関係については未だ明らかとなっていない点が多い. この問題に対し我々は, 複数成分の凝結および化学反応を考慮した 2 次元雲対流モデルを開発し, 木星大気条件において, 雲の生成消滅が繰り返された結果として決まる統計的平衡状態での大気構造を調べてきた (Sugiyama et al., 2009, 2011, 2014). 本発表では, 木星以外の巨大惑星 (土星, 天王星, 海王星)を想定した同様の 2 次元数値計算を実行し, 雲対流と平均的大気構造との関係を議論する.
モデル方程式として準圧縮系方程式 (Klemp and Wilhelmson, 1978) を用い, 雲微物理過程は地球の暖かい雨のパラメタリゼーション (Kessler, 1969) を用いて表現する. 放射過程は陽に計算せず, 水平一様かつ時間変化しない熱強制で代用する. 木星以外の巨大惑星では, 雲層における正味の放射加熱・冷却の鉛直プロファイルは観測されていないため, 木星の観測結果に基づき 2 bar 高度から対流圏界面の間を冷却する. 統計的平衡状態に至るまでの計算時間を短縮するため, 熱強制の値は木星大気における観測値より 2 桁大きい -1 k/dayとする.
鉛直計算領域は, 土星で 500 km, 天王星と海王星で 600 km, 水平計算領域は各ケースとも 960 km とする. 鉛直計算領域の大きさ, および下部境界での温度圧力は熱平衡計算 (Sugiyama et al., 2006) に基づき決定した. 解像度は水平方向と鉛直方向共に 2 km とする. 初期の鉛直温度構造は, 下部境界から対流圏界面までは断熱的とし, その上部は温度一定とする. 凝結成分気体の存在度は太陽組成を基準に数通り与える.
一例として, 以下では凝結成分気体の存在度は太陽組成の 1 倍とした場合の土星条件での数値計算結果を示す; 当日は天王星・海王星条件での結果や, 凝結成分気体の存在度を広く変化させた計算も示す予定である. 雲対流層内の流れ場は, 上昇域よりも下降域の方が強くて狭いという特徴が見られる. この特徴は狭くて強い上昇流と広くて弱い下降流によって特徴付けられた木星大気の雲対流計算の結果 (Sugiyama et al., 2009) と明らかに異なる. その一方で, 凝結性成分気体と凝結物の平均的鉛直分布の特徴は木星大気の雲対流計算の結果と整合的である. H2O 持ち上げ凝結高度に形成される安定層が流れ場に対する境界として作用しており, 鉛直速度の自乗平均はその高度において局所的な最小値を取る. 活発な対流によって, H2O と NH4SH の雲粒は NH3 持ち上げ凝結高度より上空まで移流される. 雲対流層内はよく混合されるため, NH3 と H2S 蒸気はそれぞれの持ち上げ凝結高度ではなく H2O 持ち上げ凝結高度より高度と共に減少を始める.
ていると考えられている. しかし, 厚い雲に覆われた巨大惑星の雲層を遠隔観測するのは困難であり, 巨大惑星における雲対流と平均的大気構造との関係については未だ明らかとなっていない点が多い. この問題に対し我々は, 複数成分の凝結および化学反応を考慮した 2 次元雲対流モデルを開発し, 木星大気条件において, 雲の生成消滅が繰り返された結果として決まる統計的平衡状態での大気構造を調べてきた (Sugiyama et al., 2009, 2011, 2014). 本発表では, 木星以外の巨大惑星 (土星, 天王星, 海王星)を想定した同様の 2 次元数値計算を実行し, 雲対流と平均的大気構造との関係を議論する.
モデル方程式として準圧縮系方程式 (Klemp and Wilhelmson, 1978) を用い, 雲微物理過程は地球の暖かい雨のパラメタリゼーション (Kessler, 1969) を用いて表現する. 放射過程は陽に計算せず, 水平一様かつ時間変化しない熱強制で代用する. 木星以外の巨大惑星では, 雲層における正味の放射加熱・冷却の鉛直プロファイルは観測されていないため, 木星の観測結果に基づき 2 bar 高度から対流圏界面の間を冷却する. 統計的平衡状態に至るまでの計算時間を短縮するため, 熱強制の値は木星大気における観測値より 2 桁大きい -1 k/dayとする.
鉛直計算領域は, 土星で 500 km, 天王星と海王星で 600 km, 水平計算領域は各ケースとも 960 km とする. 鉛直計算領域の大きさ, および下部境界での温度圧力は熱平衡計算 (Sugiyama et al., 2006) に基づき決定した. 解像度は水平方向と鉛直方向共に 2 km とする. 初期の鉛直温度構造は, 下部境界から対流圏界面までは断熱的とし, その上部は温度一定とする. 凝結成分気体の存在度は太陽組成を基準に数通り与える.
一例として, 以下では凝結成分気体の存在度は太陽組成の 1 倍とした場合の土星条件での数値計算結果を示す; 当日は天王星・海王星条件での結果や, 凝結成分気体の存在度を広く変化させた計算も示す予定である. 雲対流層内の流れ場は, 上昇域よりも下降域の方が強くて狭いという特徴が見られる. この特徴は狭くて強い上昇流と広くて弱い下降流によって特徴付けられた木星大気の雲対流計算の結果 (Sugiyama et al., 2009) と明らかに異なる. その一方で, 凝結性成分気体と凝結物の平均的鉛直分布の特徴は木星大気の雲対流計算の結果と整合的である. H2O 持ち上げ凝結高度に形成される安定層が流れ場に対する境界として作用しており, 鉛直速度の自乗平均はその高度において局所的な最小値を取る. 活発な対流によって, H2O と NH4SH の雲粒は NH3 持ち上げ凝結高度より上空まで移流される. 雲対流層内はよく混合されるため, NH3 と H2S 蒸気はそれぞれの持ち上げ凝結高度ではなく H2O 持ち上げ凝結高度より高度と共に減少を始める.