17:30 〜 17:45
[PCG38-P04_PG] 雲解像モデルを用いた金星重力波の2次元数値実験
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:金星大気, 重力波, 数値計算
昨今、地球だけでなく金星大気中でも重力波がよく観測されるようになった。例えば、O2の大気光観測によって高度110kmにて水平波長が100 km程度の重力波が見られている。また金星周回衛星に搭載された紫外光カメラの撮像観測により、雲頂 (高度70 km) で水平波長が60-150 kmの重力波が確認されている。しかしこれらの観測では、ある特定の高度での重力波しか見ることができず、波の鉛直伝播特性を考察することや運動量フラックスを見積もることが難しい。また、電波掩蔽観測によって高度65-90 kmの範囲で得られた鉛直温度分布から、重力波に伴う温度擾乱が検出され、そのスペクトル解析から鉛直波長5-10 kmの波が卓越することが示されている。しかしこの観測では水平方向に物理量を積分してしまうため、上記の様な小規模な重力波を捉えることは出来ず、また水平波長や水平位相速度について知ることができない。このように、現段階では重力波が金星大気の運動に与える影響を観測のみから理解することは難しい。
本研究では、金星雲層中の対流層から生成される重力波について対流生成も含めて2次元の数値計算を行い、波の伝播特性や位相速度、波に伴う大気の加速・減速率について考察する。過去にも重力波が金星大気の運動に及ぼす影響に関する理論研究はあるが、いずれも地球の重力波観測に基づいた経験的なスペクトルをモデルに組み込んでいる。また対流そのものの挙動についてはImamura et al. (2014) で計算されているが、高度60 kmより上は考慮していない。故に重力波の励起から伝播に至るまで全て網羅した理論研究は、本研究が初めてである。
モデル方程式として準圧縮系方程式 (Klemp and Wilhelmson, 1978) を用いる。計算の水平領域は50 km、鉛直領域は金星の高度35-100 kmとした。また解像度は水平方向に400 m、 鉛直方向に 250 mである。境界条件は上・下端にて、応力なし・鉛直流なし・温位フラックスなしとし、側面は周期境界とする。また波の反射を抑えるために、上端から20 kmと下端から5 kmの範囲でそれぞれスポンジ層を設けた。初期に与える温度の鉛直分布は、放射対流平衡の下での温度分布 (Ikeda et al. 2010) を用いた。この時の静的安定度は、高度48-55 kmで中立層、その上下に安定層を持つように分布している。放射過程は陽に計算せず、水平一様かつ時間変化しない熱強制を与え、正味の放射加熱・冷却の鉛直分布はIkeda et al. (2010) に準ずる。初期では大気は静止しているとし、対流運動を駆動するために最大振幅1 Kの温位擾乱を高度45 kmに与え、そこから15日分の計算を行った。その結果、 高度48-55 kmにて対流が生じており、対流層内の鉛直流の大きさ最大で約3 m s-1である。また対流の水平スケールは約10 km程度である。対流層の上に位置する安定層では、対流によって励起された重力波が鉛直に伝播している様子が見られる。また高度60-80 kmにおける波に伴う鉛直流のホフメラー図を見ると、今回の計算では鉛直波長が約4 kmの波が卓越しており、波の周期は〜5×103 sであった。また水平波長は50 km程度であった。これらの値は重力波の分散関係式を満たしている。また波の水平位相速度は±10 m s-1程度であり、過去の紫外画像解析から推定された値と同程度である。当日は、より計算領域を広く取った上で数値計算を行った結果も提示し、実際の観測結果との比較について詳しく議論する予定である。
本研究では、金星雲層中の対流層から生成される重力波について対流生成も含めて2次元の数値計算を行い、波の伝播特性や位相速度、波に伴う大気の加速・減速率について考察する。過去にも重力波が金星大気の運動に及ぼす影響に関する理論研究はあるが、いずれも地球の重力波観測に基づいた経験的なスペクトルをモデルに組み込んでいる。また対流そのものの挙動についてはImamura et al. (2014) で計算されているが、高度60 kmより上は考慮していない。故に重力波の励起から伝播に至るまで全て網羅した理論研究は、本研究が初めてである。
モデル方程式として準圧縮系方程式 (Klemp and Wilhelmson, 1978) を用いる。計算の水平領域は50 km、鉛直領域は金星の高度35-100 kmとした。また解像度は水平方向に400 m、 鉛直方向に 250 mである。境界条件は上・下端にて、応力なし・鉛直流なし・温位フラックスなしとし、側面は周期境界とする。また波の反射を抑えるために、上端から20 kmと下端から5 kmの範囲でそれぞれスポンジ層を設けた。初期に与える温度の鉛直分布は、放射対流平衡の下での温度分布 (Ikeda et al. 2010) を用いた。この時の静的安定度は、高度48-55 kmで中立層、その上下に安定層を持つように分布している。放射過程は陽に計算せず、水平一様かつ時間変化しない熱強制を与え、正味の放射加熱・冷却の鉛直分布はIkeda et al. (2010) に準ずる。初期では大気は静止しているとし、対流運動を駆動するために最大振幅1 Kの温位擾乱を高度45 kmに与え、そこから15日分の計算を行った。その結果、 高度48-55 kmにて対流が生じており、対流層内の鉛直流の大きさ最大で約3 m s-1である。また対流の水平スケールは約10 km程度である。対流層の上に位置する安定層では、対流によって励起された重力波が鉛直に伝播している様子が見られる。また高度60-80 kmにおける波に伴う鉛直流のホフメラー図を見ると、今回の計算では鉛直波長が約4 kmの波が卓越しており、波の周期は〜5×103 sであった。また水平波長は50 km程度であった。これらの値は重力波の分散関係式を満たしている。また波の水平位相速度は±10 m s-1程度であり、過去の紫外画像解析から推定された値と同程度である。当日は、より計算領域を広く取った上で数値計算を行った結果も提示し、実際の観測結果との比較について詳しく議論する予定である。