16:15 〜 17:30
[PEM05-P02] 中間圏および下部熱圏における準二年周期振動と半年周期振動の振幅変調について
キーワード:流星レーダー, MFレーダー, 成層圏, 半年周期振動, 準二年周期振動
赤道域において、1ヶ月平均した東西風に現れる特徴的な振動現象としては、成層圏では準二年周期振動(QBO)、中間圏および下部熱圏(MTL)では半年周期振動(SAO)が有名である。加えてMLTでは、二年または三年に一度春に西向き風が強まるという現象が出現することが分かっている。([Rao et al.,2012])この現象を、以下ではMQBE(Mesosphere Quasi-Biennual Enhancement)と呼称する。近年においてRao et al.,(2012)は、1993年、1995年、1997年、2000年、そして2002年の春にMQBEが出現したことを示し、一方で2002年以降ではこれらの現象が出現しなくなったということを報告した。しかし、赤道直下におけるレーダー観測の時間分解能が全く十分でないことや、また上空50kmから80kmにかけての風速を十分な空間精度で観測する方法が存在しないことなどから、MQBEの出現特性やその発生メカニズムはいまだに解明されていない。
そこで我々は、MQBEの出現特性を明らかにし、発生メカニズムを解明するため、カウアイ島・インド南部のツルネリベリ・クリスマス島・スマトラ島コトタバンなどのアジア・オセアニア域に展開する流星レーダーおよびMFレーダーから得られた、1990年以降の長期にわたる風速データの解析を行った。さらに、NASAが提供するMERRAの全球再解析データを用いて、MLTと成層圏における1ヶ月平均した東西風の関係を調べた。解析の際、大学間連携プロジェクト”IUGONET”(Inter-university Upper atmosphere Global Obserbation NETwork)の提供する観測データおよび解析ツール”UDAS”を用いた。また、時系列データに対して周波数の変化と振幅変調を分離するStockwell変換を用いたスペクトル解析を行った。
東西風について解析した結果、MLT領域の高度80-100 kmにおいて西向き平均風速32m/sを超えるMQBEは、これまで報告されている年に加えて、2005年、2008年、2011年においても出現することが分かった。また、Stockwell変換を用いたスペクトル解析の結果、MQBEが出現するときに合わせてMLT領域のSAOの振幅が増大しているということも分かった。さらに、MERRAの再解析データから得られた成層圏と下部熱圏の東西平均風から6ヶ月周期成分を抽出して比較した結果、下部熱圏(90 km付近)と成層圏界面付近(1 hPa付近)との間には負の良い相関関係(相関係数は-0.6程度でラグは2ヶ月以内)、および下部熱圏と成層圏下層(70 hPa付近)における1ヶ月平均した東西風とも良い相関関係(相関係数は0.6程度でラグは2ヶ月以内)がみられることも判明した。前者の結果は、成層圏におけるSAOと中間圏におけるSAOの位相が逆転することと整合的である。
これらのことから、2002年以降は出現していないと報告されていたMQBEが、実際には2005年以降も出現しているということが分かった。また、MQBEの出現特性についてはよくわかっていなかったが、出現時期とSAOの振幅変調との対応が明らかになった。加えて、MLTと成層圏との対応関係からは、成層圏界面もしくは成層圏下層においてMQBEを駆動する現象が起きているのではないかという推測をすることができる。以上のことを総合すると、成層圏QBOと同様に大気下層において生成される重力波がMQBEの駆動源として浮かび上がる。
今後の課題としては、MQBEを駆動するメカニズムの解明のため、赤道上空における重力波の解析を進めることが挙げられる。
そこで我々は、MQBEの出現特性を明らかにし、発生メカニズムを解明するため、カウアイ島・インド南部のツルネリベリ・クリスマス島・スマトラ島コトタバンなどのアジア・オセアニア域に展開する流星レーダーおよびMFレーダーから得られた、1990年以降の長期にわたる風速データの解析を行った。さらに、NASAが提供するMERRAの全球再解析データを用いて、MLTと成層圏における1ヶ月平均した東西風の関係を調べた。解析の際、大学間連携プロジェクト”IUGONET”(Inter-university Upper atmosphere Global Obserbation NETwork)の提供する観測データおよび解析ツール”UDAS”を用いた。また、時系列データに対して周波数の変化と振幅変調を分離するStockwell変換を用いたスペクトル解析を行った。
東西風について解析した結果、MLT領域の高度80-100 kmにおいて西向き平均風速32m/sを超えるMQBEは、これまで報告されている年に加えて、2005年、2008年、2011年においても出現することが分かった。また、Stockwell変換を用いたスペクトル解析の結果、MQBEが出現するときに合わせてMLT領域のSAOの振幅が増大しているということも分かった。さらに、MERRAの再解析データから得られた成層圏と下部熱圏の東西平均風から6ヶ月周期成分を抽出して比較した結果、下部熱圏(90 km付近)と成層圏界面付近(1 hPa付近)との間には負の良い相関関係(相関係数は-0.6程度でラグは2ヶ月以内)、および下部熱圏と成層圏下層(70 hPa付近)における1ヶ月平均した東西風とも良い相関関係(相関係数は0.6程度でラグは2ヶ月以内)がみられることも判明した。前者の結果は、成層圏におけるSAOと中間圏におけるSAOの位相が逆転することと整合的である。
これらのことから、2002年以降は出現していないと報告されていたMQBEが、実際には2005年以降も出現しているということが分かった。また、MQBEの出現特性についてはよくわかっていなかったが、出現時期とSAOの振幅変調との対応が明らかになった。加えて、MLTと成層圏との対応関係からは、成層圏界面もしくは成層圏下層においてMQBEを駆動する現象が起きているのではないかという推測をすることができる。以上のことを総合すると、成層圏QBOと同様に大気下層において生成される重力波がMQBEの駆動源として浮かび上がる。
今後の課題としては、MQBEを駆動するメカニズムの解明のため、赤道上空における重力波の解析を進めることが挙げられる。