日本地球惑星科学連合2014年大会

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インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM09_28PM1] VarSITI - Variability of the Sun and Its Terrestrial Impact

2014年4月28日(月) 14:15 〜 16:00 211 (2F)

コンビーナ:*塩川 和夫(名古屋大学太陽地球環境研究所)、坂尾 太郎(独立行政法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系)、廣岡 俊彦(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、座長:片岡 龍峰(国立極地研究所)、大塚 雄一(名古屋大学太陽地球環境研究所)

15:15 〜 15:30

[PEM09-19] 野辺山太陽電波ヘリオグラフと黒点スケッチを用いたジャイロレゾナンス源の統計的解析

*大辻 賢一1柴崎 清登1田中 悠基2宮腰 剛広3 (1.国立天文台、2.京都大学、3.海洋研究開発機構)

キーワード:太陽, 電波, 黒点

国立天文台野辺山太陽電波観測所では、電波ヘリオグラフを用いた太陽全面観測を1992年から毎日継続して行っている。電波ヘリオグラフからは、電波強度及び円偏波の測定を行うことで、ジャイロレゾナンスが発生している領域をとらえることができる。ジャイロレゾナンスは、電子が黒点の磁力線の周囲を旋回運動する際に円偏波と共鳴して高い円偏波率を持つ電波が放射される機構で、その強度は黒点の磁場強度と観測周波数に依存する。野辺山太陽電波観測所では、17GHzでの観測を行っており、2000G程度の磁場強度領域からのジャイロレゾナンス放射を捉えていると考えられる。しかしこれまでは、電波によるジャイロレゾナンス源と磁場データや活動領域データとを統合した統計的解析は限られており、これらを包括したデータベース作成が急務となっていた。今回、我々は野辺山太陽電波観測所の電波へリオグラフによる観測データからジャイロレゾナンス源の検出を行い、NOAA (National Oceanic and Atmospheric Administration)による活動領域番号と対応付けた上で光球磁場強度と併せたデータベース作成を行った。電波ヘリオグラフによる観測データからは、ジャイロレゾナンス源毎にその座標、電波強度及び円偏波強度、面積をリスト化し、NOAAによる活動領域データベースからは、ジャイロレゾナンス源に対応する活動領域の面積、マッキントッシュ分類、黒点数、磁場配置タイプをリスト化した。また、光球磁場強度としては、太陽全面をカバーでき、かつサチュレーション効果が無いデータを用いるため、Mt.Wilson及びCrimeaの黒点スケッチから磁場強度読み取りを行った。この際、スケッチの画像データから半自動的にfitsファイルの作成を行い、データベース作成の効率化を図った。今回作成したデータベースは1992年から2013年に渡り、太陽活動周期のほぼ2周期分に相当する。このデータベースを用いて、種々の統計解析を行った結果、サイクル23の後半(2002-2007)ではジャイロレゾナンスを伴う活動領域の割合が増加していることが判明した。これはサイクル22では確認されておらず、サイクル23に特有の現象である可能性がある。また、ジャイロレゾナンス発生数と活動領域数との間には2次の相関が見られた。すなわち、ジャイロレゾナンスを伴う活動領域の割合は、活動領域の数そのものに比例していることになる。さらに、ジャイロレゾナンスを伴う活動領域を、その磁場配置タイプで分類すると、複雑な磁場配置(βγδ型等)が多数を占める結果となった。これらのジャイロレゾナンスの統計解析は、これまでの太陽活動の周期的変化をとらえ、今後の太陽活動の予測に繋がるものと期待される。