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[PEM27-02] 野辺山電波へリオグラフと衛星多視線観測によるコロナのベクトル磁場の導出
キーワード:太陽, コロナ, 磁場, 偏波観測, 野辺山電波へリオグラフ
太陽コロナでは、フレアやコロナ質量放出現象に代表される爆発現象が数多く発生する。これらはコロナの磁場とプラズマの相互作用によって引き起こされる。よって、コロナ中の磁場、プラズマ密度、温度という環境パラメータを正確に計測することは、コロナにおける諸現象を理解するうえで非常に重要である。本研究では、野辺山電波ヘリオグラフ(NoRH)による熱制動放射の観測と、STEREO衛星・SDO衛星による紫外線の多視線観測を組み合わせることで、コロナのベクトル磁場、プラズマ密度、温度を精密に計測することに成功した。観測では、2013年4月11日に西のリムで発生したフレアのポストフレアループを対象とした。ポストフレアループの視線方向磁場は、NoRHによる熱制動放射の偏波観測によって導出された。ループの地球から見た場合の傾き角はSTEREO衛星から導出された。両者を合わせることで、コロナループのベクトル磁場が導出された。プラズマ密度と温度はSDO衛星に搭載された紫外撮像装置AIAの6枚のフィルタの撮像データから導出された。NoRHによる熱制動放射の電波強度とAIAから求められたプラズマ温度を組み合わせることで、電波放射に寄与するプラズマの密度も導出された。その結果、電波観測から導出された密度は、紫外線観測から導出された密度に対して約40%大きかった。この原因は、AIAの温度感度外の低温プラズマの影響によるものと考えられる。導出された磁場、密度、温度を用いてコロナループの磁気圧とプラズマ圧の比(プラズマベータ)を導出した結果、ループトップ領域で6.2×10-3であった。本研究で導出したプラズマパラメータはすべて観測に基づいており、特にコロナのベクトル磁場はこれまで導出された中で、最も仮定やモデルの影響が小さいものの一つである。