日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM27_1PM2] 太陽圏・惑星間空間

2014年5月1日(木) 16:15 〜 18:00 421 (4F)

コンビーナ:*徳丸 宗利(名古屋大学太陽地球環境研究所)、中川 朋子(東北工業大学工学部情報通信工学科)、座長:徳丸 宗利(名古屋大学太陽地球環境研究所)

17:45 〜 18:00

[PEM27-P06_PG] 多地点IPS観測システムの更新とサイクル24極大期の太陽風観測

ポスター講演3分口頭発表枠

*徳丸 宗利1藤木 謙一1丸山 一夫1丸山 益史1山崎 高幸1伊集 朝哉1 (1.名古屋大学太陽地球環境研究所)

キーワード:太陽風, 惑星間空間シンチレーション, 太陽圏, 太陽活動周期, 宇宙天気

惑星間空間シンチレーション(interplanetary scintillation; IPS)は太陽風のグローバルな分布を決定する有効な手段となることから、名古屋大学太陽地球環境研究所(STE研)において多地点システムにより30年以上にわたって定常的な観測が実施されてきた。このような長期にわたる観測を可能したのは、絶え間なくシステムを維持・更新してきたからである。現在STE研では豊川・富士・木曽・菅平の4箇所に大型のIPS観測専用アンテナを有しているが、その内、豊川のIPSアンテナは2008年に新型アンテナ(太陽圏イメージング装置、SWIFT, Tokumaru et al., 2011)に更新されている。その後、科研費を使って富士・木曽アンテナの観測制御・データ収集システムを更新し、2010年より豊川・富士・木曽アンテナによる3地点IPS観測が可能になった。ただ、富士・木曽アンテナの心臓部であるフェーズドアレイ型低雑音受信機は従来のままであり、アンテナ反射面や駆動モータ・ギアなどとともに老朽化していた。これを改良するため、2012年度の補正予算および2013年度からの科研費基盤(A)により富士・木曽・菅平アンテナについて大規模な更新作業が行われている
今回の更新内容は次の通り。1)HEMTを用いた低雑音受信機FE327-V5を搭載し、これをフェーズドアレイとして機能させるための制御システムを開発する。木曽アンテナでは、バックエンド部の開発も必要になる。2)富士・木曽アンテナではループ法による受信機位相・利得校正システムおよびノイズソースを用いた受信機温度測定システムを開発する。3)アンテナ反射面、駆動ギア、およびモータ(木曽のみ)を新しいものと交換し、防錆塗装・防水対策を実施する。2013年末までに項目3)および項目1)、2)の富士アンテナについて作業が概ね完了し、2014年春以降に木曽アンテナについて項目1)、2)を実施する予定である。
この更新作業に伴って2013年のIPS観測は4~8月の期間のみとなった。得られたデータからは、北半球で高速風領域が出現しているのに対し、南半球ではまだ出現しておらず、低速風が支配的であることがわかった。極大期において北半球における高速風の消滅・再出現が南半球に先行して起ることは、過去の2サイクルにも見られたことから、太陽ダイナモ活動の共通する特徴であるといえる。また、今サイクルにおいても高速風と極磁場との間でよい相関が見られるが、その傾きは過去とは異なっていることも明らかとなった。これは今サイクルでは高次の磁気モーメントが作る高速風領域がより過去と比べ大きな寄与をしているためと考えられる。今後、太陽風は次の極小期に向けた構造変化が顕著になってくると予想される。その変化を見逃さないために、IPSシステムの更新作業を早急に完成させたい。