日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM28_29PO1] 磁気圏-電離圏結合

2014年4月29日(火) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*中野 慎也(情報・システム研究機構 統計数理研究所)、田中 良昌(国立極地研究所)、堀 智昭(名古屋大学太陽地球環境研究所 ジオスペース研究センター)

18:15 〜 19:30

[PEM28-P01] 新開発偏光分光イメージャによる酸素原子630nmオーロラの偏光観測

*高崎 慎平1坂野井 健1鍵谷 将人1 (1.東北大学・惑星プラズマ大気研究センター)

キーワード:オーロラ, 偏光観測

近年の直線偏光子とフォトーメータを組み合わせた極冠域(磁気緯度75度)ポーラ-レイン降下電子による酸素原子630nmのオーロラ発光の観測結果から磁力線平行方向に2-7%程度の直線偏光が生じていることが示唆された[Lilensten et al., 2013]。しかしながら、この研究は高緯度地域の十数例の限られた観測である。一方、理論的にも降下電子エネルギーやピッチ角分布に対応し、630nm発光が最大で17%偏光する可能性が示唆されている[Bommier et al., 2011]。オーロラ偏光観測をオーロラ帯やサブオーロラ帯における活発なオーロラの偏光特性を調べることを目的とし、我々はオーロラ偏光度を直線偏光1%程度の精度で測定することを可能とする装置を開発した。我々は昨年の観測データから、磁力線平行方向に2-4%の直線偏光が生じ、偏光度は視線が磁力線に対し垂直方向で最も大きく平行方向で最も小さいという結果が得られた。しかしながら、この観測では10cm口径と比較的小口径のガラスドームを用いたためゴーストが生じこれによる偏光度の誤差を取り除くことが困難であった。よって今回の観測では45cm口径のアクリルドームを用いた。しかし、アクリルドームはガラスに比べて温度変化によって変形しやすく、ドームは固定されているため加わる応力が変化することによって、偏光特性が非一様に変化し、無視できない誤差を生む要因となりうる。また、オーロラのような比較的微弱光に対し、直線偏光1%の高精度で行うためには、ドームだけでなく光学パス内のすべてのユニット、すなわち装置内部の光学系の偏光校正を厳密に行う必要がある。
そこで、今回の観測装置については、装置の偏光特性を取り除くために630nmオーロラだけでなく、四重極放射であり偏光されていないとされる557.7nmオーロラを同時に観測でき、かつ磁力線との角度依存性も同時に捉えられるように、磁気子午線に沿った視野を持つ分光イメージャを新たに開発した。この装置の視野は130度、波長範囲は420nm-680nmである。偏光については直線偏光子をステージに装着し回転させる機構を使用して偏光特性を得ている。
この新開発の偏光分光イメージャーは、2013年11月末にアラスカ・ポーカーフラットの設置され、それ以降2014年4月はじめまで連続自動運用されている。設置時に行った偏光キャリブレーションについて、先述のドームに起因する偏光特性の変化を取り除くため、気温や風速が異なる様々な状況下でLEDと直線偏光子を組み合わせた偏光度100%の光を異なった7方向からドームに入射することでドームの偏光特性を調べた。その結果、偏光度はほとんど変化せず、変更方向も測定誤差程度の変化しか生じなかった。よって偏光特性は気温や圧力の変化に対してほとんど依存しないことが確認された
これまでの観測データから、630nmのオーロラに対して、偏光度10%程度の偏光を得ることができた。また、偏光度・偏光方向どちらにも角度依存性が存在することが確認された。しかし、偏光されていないはずの557.7nmのオーロラについても同様に7%程度の偏光が得られた。こちらに関しても630nmのオーロラと同様の角度依存性が確認できた。このことから、発光領域から観測されるまでの経路上で、大気中の粒子による散乱をはじめとした、共通の偏光過程を経ている可能性が示唆される。本発表では、今回の観測で得られたこれらの結果を報告する。