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[PEM29-P02_2] 高強度レーザー実験における相対論効果による種磁場形成の数値計算
キーワード:相対論プラズマ, 高強度レーザー実験, 磁場生成
現在宇宙に存在する磁場や渦構造の起源は大きな謎である.流体描像におけるプラズマでは磁場は力学的渦と結合し,正準運動量のcurlによって規定される.理想状態において渦の生成が有限であるために何らかの非完全微分の形をした項が必要となる.非相対論的理想プラズマにおいて渦を生成しうる非完全項は熱力学的な傾圧効果∇T×∇σのみである.これはBiermannのBattery効果として知られている.しかし熱力学的傾圧効果による渦生成は熱平衡に近い状態では大きな値を持てないため初期宇宙などでは,傾圧効果による渦生成は小さいと予想される.これに対して最近Mahajan and Yoshidaによって提唱された相対論効果による渦生成[1]は熱平衡に近くても大きな値を持つことができるため,宇宙の種磁場形成の有力な候補になるのではないかと考えられている[2].相対論的プラズマでは2つの渦生成項ST=γ-1∇T×∇σとSR=T∇γ-1×∇σが存在するため,熱平衡に近くT∇σ=∇θであっても,∇γ-1×∇θという渦生成項(相対論的傾圧効果)を持つことができる.
このように理論的に予測された相対論敵傾圧効果を実験的に検証することが必要とされる.最近の高強度レーザー実験では相対論的電子プラズマを生成し,またそのときに生じる磁場の高解像度な測定が行われているため[3],レーザー実験において相対論的傾圧効果を観測することができると期待できる.本研究では相対論的プラズマの非線形数値計算を行い,レーザー実験による相対論的渦生成の検証への提言を行う.
これまでの計算結果では参考文献[3]に妥当なパラメータ領域では相対論的傾圧効果は熱力学的傾圧効果の10分の1程度であり,相対論的傾圧効果の観測は難しいことがわかった.またプラズマの温度を上昇させるか,スキン長さ/スケールサイズを低下させることによって相対論的傾圧効果の比率を上げることができる(図).波数空間でみると相対論的傾圧効果は熱力学的傾圧効果よりも大スケールにおいて強くなることがわかった.
[1] S. M. Mahajan and Z. Yoshida, Phys. Rev. Lett. 105, 095005 (2010).
[2] S. M. Mahajan and Z. Yoshida, Phys. Plasmas 18, 055701 (2011).
[3] S. Mondal et al., PNAS 109, 8011 (2012).
このように理論的に予測された相対論敵傾圧効果を実験的に検証することが必要とされる.最近の高強度レーザー実験では相対論的電子プラズマを生成し,またそのときに生じる磁場の高解像度な測定が行われているため[3],レーザー実験において相対論的傾圧効果を観測することができると期待できる.本研究では相対論的プラズマの非線形数値計算を行い,レーザー実験による相対論的渦生成の検証への提言を行う.
これまでの計算結果では参考文献[3]に妥当なパラメータ領域では相対論的傾圧効果は熱力学的傾圧効果の10分の1程度であり,相対論的傾圧効果の観測は難しいことがわかった.またプラズマの温度を上昇させるか,スキン長さ/スケールサイズを低下させることによって相対論的傾圧効果の比率を上げることができる(図).波数空間でみると相対論的傾圧効果は熱力学的傾圧効果よりも大スケールにおいて強くなることがわかった.
[1] S. M. Mahajan and Z. Yoshida, Phys. Rev. Lett. 105, 095005 (2010).
[2] S. M. Mahajan and Z. Yoshida, Phys. Plasmas 18, 055701 (2011).
[3] S. Mondal et al., PNAS 109, 8011 (2012).