日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM29_30AM2] プラズマ宇宙:波動粒子相互作用,粒子加速,相対論的プラズマ

2014年4月30日(水) 11:00 〜 12:45 503 (5F)

コンビーナ:*松清 修一(九州大学大学院総合理工学研究院流体環境理工学部門)、永岡 賢一(核融合科学研究所)、座長:中村 匡(福井県立大学)

12:30 〜 12:45

[PEM29-P03_PG] 宇宙線変成衝撃波と宇宙線の生成率

ポスター講演3分口頭発表枠

*斎藤 達彦1星野 真弘1天野 孝伸1 (1.東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)

銀河系内で加速・生成されている銀河宇宙線は、銀河系内で起きる超新星爆発に起因する衝撃波をその起源としている。その加速メカニズムはDiffusive Shock Acceleration (DSA)理論[Blandford & Ostriker, 1978; Bell, 1978]として知られているが、そこには多くの理論的仮定が存在する。その一つに「被加速粒子(宇宙線)の反作用効果」が取り入れられていない点が挙げられる。これについてはDrury & Völk (1981)によって宇宙線の圧力を介した反作用効果モデルが提案されている。このモデルは背景プラズマと宇宙線を共に流体として扱うため「2流体モデル」と呼ばれる。また、宇宙線の反作用を受け、構造を大きく変化させた衝撃波は「宇宙線変成衝撃波」と呼ばれており、近年の観測からその存在が示唆されている。
他方、衝撃波加速による宇宙線の生成効率に関しては、非常に高効率で生成されているという観測 (Helder et al. 2009; Hughes et al. 2000) もある一方で、低効率であるとする観測 (Fukui 2013) もあり、統一的な見解が得られていないのが現状である。本研究では、この衝撃波での宇宙線の生成効率に関して、「宇宙線の反作用を考慮した加速メカニズム」を考えることによってその多寡を定性的に議論した。
宇宙線変成衝撃波では、上流での物理状態に対して下流の物理状態がただ一つ決まる通常の(反作用のない)衝撃波に対して、最大で3つの宇宙線の生成効率の異なる状態が許され、非常に特異的なものである。
本研究では、この下流の物理状態の「多価性」に着目して、2流体モデルを用いた数値計算による時間発展を行い、各々の時間定常状態の安定性を検証した。その結果、3つのうち、宇宙線の生成効率が“最も高い状態”と“最も低い状態”の 2つが安定的に存在でき、その“中間的な状態”は不安定によって“最も低い状態”へと遷移した。さらに、この特徴は2流体モデルに対して①磁場の効果を導入した場合も、②衝撃波面での粒子注入効果を導入した場合でも同様であった。
加えて、初期に宇宙線がない非定常な状態からの時間発展を計算すると、この2つの安定状態のうち生成効率が“最も低い状態”が唯一最終的な定常状態として存在できることが分かった。