15:10 〜 15:30
★ [PEM30-02] 電気対流乱流を用いた乱流輸送の実験研究
キーワード:乱流輸送実験, 対称性の破れ, 電気対流, 液晶
乱流輸送は、広い分野で研究対象となっている課題である。Kolmogorov則が支配する3次元等方乱流では、現実の系としては興味が薄く、一般に我々の興味の対象は、構造形成を伴う非常に複雑な系である。近年では、乱流中の構造形成は、その系に内在する対象性の破れと乱流の結合により生じると考えられており、温度、密度、乱流強度などの非一様性や回転などとの乱流の結合が議論されている。我々は、新たな実験的研究として、非常に制御性の良い電気対流乱流を用いた乱流輸送実験を提案している。電気対流とは、液晶に電圧を印加したときに駆動される対流現象であり、Rayleigh Bernard対流の重力場と浮力を電場のみで置き換えることに対応している。印加する電圧を上げると電気対流は、乱流へと遷移する。これはRayleigh Bernard対流系と同様の性質である。電気対流乱流の場合は、乱流を特徴付ける無次元パラメータを印加電圧により制御することが可能である。すなわち、Rayleigh数は、電圧の2乗に比例し、Prandtl数は、印加電圧の周波数の逆数に比例することが知れらている。この電気対流乱流を回転ステージに乗せて実験を行うことで、Rossby数の制御も可能である。つまり、3つの無次元パラメータを独立に制御することが可能である。初期実験として、一様対称な電気対流乱流を用いた乱流輸送の実験を行った。小さなガラス球を液晶中に混入させ、電位対流乱流中の局所的な速度場を可視化することが可能であり、粒子追跡を行うことで、粒子輸送特性を調べることも可能となる。実験では、Hurst数が0.5となり、ランダムウォークによる拡散過程が支配的な輸送が観測された。実行乱流輸送係数は、Rayleigh数の0.85乗程度で増加する結果が得られた。これらの結果は、Navier-Stokes方程式で記述される通常粘性流体に大変よく似た性質である。講演では、これらの初期実験の詳細を紹介し、3つの計画を議論する。1つ目は、乱流輸送に対する非一様性の影響を調べる実験である。乱流強度が空間非一様な場合の乱流輸送特性の変化の計測を目指す。2つ目は、回転の効果である。電気対流乱流を回転場で生成したときに、乱流と回転が結合する状態での輸送特性の評価を試みる。これらの2つの実験は、乱流輸送に対するスカラー場と軸性ベクトル場の対象性破れの影響を明らかにする可能性があると考えている。最後は、星や惑星の対流層の実験室シミュレーションである。これまでに、回転球殻形状では乱流は半径方向に駆動することができなかった。電気対流乱流を使うことで、電場のみで乱流を駆動することができるため、半径方向に乱流駆動が可能になる。最初のターゲットは、Rossby数の比較的大きな太陽対流層に挑戦する予定である。