日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM30_30PM2] プラズマ宇宙:乱流,輸送,非線形現象

2014年4月30日(水) 16:15 〜 17:48 503 (5F)

コンビーナ:*松清 修一(九州大学大学院総合理工学研究院流体環境理工学部門)、中村 匡(福井県立大学)、座長:永岡 賢一(核融合科学研究所)

16:45 〜 17:00

[PEM30-07] マルチスケール・プラズマ乱流のジャイロ運動論的シミュレーション

*渡邉 智彦1 (1.名古屋大学大学院理学研究科)

キーワード:乱流, 輸送, 運動論, シミュレーション

よく知られているようにプラズマ現象の時空間構造は複数のスケール長で特徴づけられる。しかし、そのスケール分離性は必ずしも成立するとは限らず、プラズマにおけるマルチスケール現象として宇宙や実験室のプラズマに共通の研究課題となっている。磁気再結合などはその好例としてよく議論される。一方、乱流は巨視的スケールと微視的スケールの構造を同時に含み、広い波数領域にわたって連続的な揺動スペクトルを示す。ここでは、磁場閉じ込め核融合プラズマの乱流輸送現象を対象とし、複数のスケール長をもつプラズマにおける乱流について議論する。 我々は、ジャイロ運動論にもとづいたシミュレーションにより、電子温度勾配が駆動する乱流(ETG乱流)と密度勾配が駆動する捕捉電子モード(TEM)が共存する系における輸送現象を調べている。乱流揺動を特徴づけるスケールとしては、電子とイオンのジャイロ半径の二つがある。上記の二つのモードが不安定であれば、まず、より短い時空間スケールをもつETG乱流が発達した後、長い時空間スケールをもつTEM不安定性が成長する。我々は、TEMがさらに長スケールのシア流(ゾーナル流)を駆動し、それによりETG乱流およびTEM揺動を抑制するという、興味深いケースを見出した。この結果は、ゾーナル流を介したスケール間の相互作用を利用して、異なる駆動源をもつ乱流輸送を低減させることのできる可能性を示唆している。 さらに我々は、イオン温度勾配が駆動する乱流(ITG乱流)も含むより大規模なジャイロ運動論的シミュレーションも進めており、イオンスケールから電子スケールまでの乱流揺動スペクトルとそのダイナミックな変動の様子を調べている。講演では、こうしたマルチスケール・プラズマ乱流の特徴と輸送の関連についてさらに議論したい。* 本発表は、朝比祐一(東工大)、前山伸也、仲田資季、井戸村泰宏(原子力機構)、石澤明宏、沼波政倫、洲鎌英雄(核融合研)、各氏との共同研究にもとづいている。シミュレーションの実行においては、共同研究によるサポートのもと、プラズマシミュレータ(核融合科学研究所)、ヘリオス(国際核融合エネルギー研究センター)、京(理化学研究所計算科学研究機構)、の各計算機を利用させていただいた。また、課題の実施においてはHPCI戦略課題分野4体制構築課題ならびに科学研究費補助金の支援を得た。