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[PEM30-P03_2] 巨大ブラックホールによる潮汐破壊事象の磁気流体・輻射流体数値実験
キーワード:降着円盤, 磁気流体力学, 輻射流体力学, ブラックホール, 潮汐破壊, 状態遷移
恒星やガス雲が巨大ブラックホールに接近すると潮汐力によって破壊され、ブラックホールへの降着率が急激に増加する。このような潮汐破壊事象を観測することにより、降着率変動に伴う巨大ブラックホール降着円盤の光度変化や状態遷移についての知見を得ることができ、様々なタイプの活動銀河中心核相互の関係を明らかにするとともに、降着円盤の進化のタイムスケールを決定する角運動量輸送率を見積もることも可能になる。2014年にはふたつの天体で、潮汐破壊に伴う増光が観測されると期待されている。第一は我々の銀河系中心の巨大ブラックホールSgr A*である。現在、G2と名付けられた地球の3倍の質量のガス雲が落下しつつあり、2014年3月にブラックホールに最接近すると予想されている。最近接点は降着円盤が存在すると予想されている領域内にあるため、潮汐破壊されたガス雲とブラックホール降着円盤が相互作用すると考えられる。我々は近似リーマン解法の一種であるHLLD法に基づく高次精度の3次元磁気流体コードCANS+を用いてこの相互作用の磁気流体シミュレーションを実施した。その結果、ガス雲との衝突によって降着円盤内部の磁気乱流が強まり、ブラックホールへの降着率が10倍程度高まること、磁気流体ジェットが噴出すること等を示すことができた。降着率増加に伴うX線・電波領域での増光は再近接点通過後1カ月程度で生じることもわかった。第二はSwift J1644+57と名付けられた天体であり、2011年3月に赤方偏移z=0.35の銀河中心で爆発的な増光が観測されている。この事象では恒星が巨大ブラックホールの潮汐力によって破壊されたと考えられる。この天体の光度は増光後1年以上にわたって百万太陽質量のブラックホールのエディントン光度以上であったが、2012年8月に急激に減光した。これは、エディントン光度に対応する臨界降着率を超えて物質が落下する超臨界降着状態から、臨界降着率以下で降着する標準降着円盤への状態遷移と解釈できる。輻射と物質の相互作用を考慮した輻射流体シミュレーションを実施した結果、潮汐破壊物質の落下が続くことによって円盤に物質が蓄積されつつあり、減光後、1~2年で円盤光度が再びエディントン光度程度まで増光することがわかった。X線観測等から示唆される再増光時期について議論する。