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★ [PEM32-04] 高ベータ磁化プラズマにおけるフローと自律的構造形成
キーワード:プラズモイド, スフェロマック, フロー, 自己組織化, MHD緩和, ダイナモ
スフェロマックなど自己組織化機能の強い高ベータプラズマの自発的な磁界構造形成は、太陽コロナの間欠的爆発的現象(フレアー)にみられる磁気リコネクション、キンク変形、粒子加速、衝撃波発生などの共通の物理機構が内在していることが明らかにされつつある。磁化プラズモイドやフローの駆動による巨視的なダイナモ磁場や磁気リコネクション発生の基礎過程は太陽コロナループや宇宙ジェットの発生機構、天体・宇宙惑星の回転熱対流に起因する帯状流の発生と構造形成にも大きく寄与している。また、核融合プラズマでは多彩な遷移現象を伴う自律的特性をうまく制御し、最適圧力勾配と高ベータを維持するためには、フローの発生と駆動が重要な役割を果たしていることが分かってきた。過去に発見されたHモード遷移の要因は大きな径電場の形成とそれに伴うポロイダルシア流による乱流輸送の低減である。この様な渦や流れの構造形成が高ベータプラズマの磁場構造の自律的形成に大きく関与している。本講演では、国内外の各実験装置での観測をもとに、磁化同軸プラズマガンによるトロイダルプラズマの自律的磁界構造形成など、ヘリシティ駆動系のプラズマフローが強く関与する緩和現象に関する最近の研究のトピックスを紹介する。 電磁流体力学(MHD)により記述できる天体宇宙現象はその構造のスケールが何桁も大きく違っているにも関わらず、固有の時間空間スケールを持たないことから地球上の実験室内で再現することができる。模擬するための技術的観点からは、この磁化プラズモイドやフローを幾何学的な配置とトポロジー構造を考慮にいれて柔軟に制御しながら発生させる必要がある。プラズモイドを効率よく作り出し、ダイナミックで非定常なMHD現象を探求する際の最適な実験ツールとして、磁化同軸プラズマガン(MCPG)がある。このMCPGを用いた電磁加速パルス放電によって、スフェロマックと呼ばれる高ベータトーラスプラズマを形成することができる[1]。MCPGは通常のマーシャルガンの出口付近に放射状に径方向磁場を印加しただけの簡単な構造をしている。太陽コロナの構造を支配しているのが太陽の磁界であり、内部の対流層で磁気流体ダイナモによって生産維持されている。この磁界はプラズマ流体に凍結されているため、磁力線を横切る運動が起電力を発生して電流を生み出し、この電流によってまわりに新たな磁界を生み出すという電磁流体力学の機構が働いている。スフェロマックはまさにこの電磁流体力学の基本法則に従って生成されており、MCPGの中ではそれらの法則がうまく作用している。歴史的には、1959-1964年頃にアルヴェン達がこの方法で磁化プラズマリングの生成を行ったことが今日のスフェロマック生成の起源とされている。 Woltjer-Taylor状態を記述するForce-Free式、∇×B=λB(λ:ピンチパラメータ)は、境界条件と外部トロイダル磁束の拘束によって多様な解が存在する。単連結構造のスフェロマックの場合、この式の線形解の特性は二つの違った境界条件によって決定される。一つは、完全導体で囲まれた境界(B●n=0)で、スフェロマックはガンから孤立しているような緩和配位である。もう一つは、ヘリシティ駆動系での緩和配位(Jensen-Chu配位と呼ばれる)であり、バイアス磁界がガン電極を貫いていることから一部の境界でB●n≠0の条件を与えて得られる解である。この駆動系のMHD緩和の問題をさらに複連結構造のトーラス配位に拡張させ、外部トロイダル磁界を考慮した場合、∇×B=λBの解析はさらに複雑になる。この時、J.B. TaylorはRFPとの遷移分岐としてFlippedした球状トロイダル緩和配位の存在を予測した。この複連結構造のトーラス配位の緩和現象について、兵庫県立大のHIST装置で実験が行われ、外部のトロイダル磁束を反転させると、ポロイダル磁束つまりトロイダル電流も自発的に反転する緩和が観測され、理論的な予測が実証された[2]。外部駆動系の緩和配位では、磁気ヘリシティ入射によるダイナモ電流駆動が実現でき、この方法によるトーラスプラズマを長時間維持できることがすでに実験で検証されている[3]。[1] M. Nagata et al., Phys. Rev. Lett. 71, 4342 (1993)[2] M. Nagata et al., Phys. Rev. Lett. 90, 225001 (2003) [3] M. Nagata et al., Phys. Plasmas 10, 2932 (2003)