日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM32_2AM1] プラズマ宇宙:MHD現象,リコネクション,構造形成

2014年5月2日(金) 09:00 〜 10:45 503 (5F)

コンビーナ:*松清 修一(九州大学大学院総合理工学研究院流体環境理工学部門)、新田 伸也(筑波技術大学)、座長:横山 央明(東京大学大学院理学系研究科)

10:10 〜 10:30

[PEM32-05] 太陽大気における波動の観測

*岡本 丈典1 (1.JAXA宇宙研)

キーワード:太陽, コロナ, 波動, ひので

太陽表面の温度が 6,000度であるのに対して、太陽大気コロナの温度が 100万度以上あることは半世紀以上前より知られているが、その原因についてはいまだに解明されていない。これは太陽物理学や天体物理学において長年の謎であり、「コロナ加熱問題」と呼ばれている。太陽に遍在する磁場が重要な役割を果たしていることはわかっており、その中でも「波動加熱」説が有力な候補に挙げられている。Alfven 波のような散逸しにくい波動は光球から遠距離にある上空コロナまでエネルギーを伝えることができるため、X線で観測される太陽コロナの広がりの観点からも都合が良い。しかしながら、そのような波動は長年検出されてこなかった。ところが、2006年に太陽観測衛星「ひので」が打ち上げられると、期待されていた波動と思しき現象が発見された。太陽大気は微細な構造で構成されており、それが至るところで振動していることがわかった。プロミネンス(Okamoto et al. 2007)やスピキュール(De Pontieu et al. 2007)の観測から見つかった振動は Alfven 波の伝播によるものと考えられる。2?5分程度の振動周期と 最大 20 km/s 程度の速度振幅を持ち、これらが進行波であるならコロナ加熱に十分なエネルギーを持っていることがわかった。しかし、これらの構造は波動の波長と同程度かそれ以下の長さしかないため、磁力線に沿った位相差の検出は非常に難しく、進行波か定在波かの区別は断定しがたい。その後、データ取得方法や解析手法を洗練し、進行波を検出する試みがなされた(Okamoto and De Pontieu 2011)。スピキュールの撮像データを用いたこの研究では、まずスピキュール自体を自動検出し、それから波形のピーク位置の空間・時間変化を検出するためのアルゴリズムを作成した。磁力線が太陽面から鉛直に伸びているというスピキュールの形状を踏まえ、上向きの進行波、下向き進行波、及びそれらが合成した定在波を分離することに成功した。それぞれの波動の存在割合や空間的時間的分布を統計的に調べることで、スピキュールの進化と波動の発展には関連性があることがわかり、またスピキュール上端付近で波動が反射され、太陽面に戻っていることが示唆された。なお、ここで検出された波動は周期が 1分程度の高周波波動で、輸送エネルギーの観点から 2?5分の低周波波動の方がコロナ加熱には重要であると考えられる。このような波動の研究は、コロナ加熱の直接的要因であるという理由だけではなく、磁場強度などの測定が困難な物理量の導出の手がかりとなる点で、非常に有用である。本講演では、これらのひのでの結果や、最近観測が開始された太陽観測衛星IRISによる太陽波動研究の最新情報も報告したい。