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[PEM33-03] 直線型磁化プラズマ装置を用いたプラズマ波動・粒子相互作用の直接観測実験
近年、ジオスペースにおける放射線帯の高エネルギー電子の起源として、プラズマ波動と粒子の相互作用による粒子加速過程が重要な役割を担っていると考えられている。この波動・粒子相互作用の観測を目的として、電場と粒子速度の同時観測から波動・粒子間のエネルギーフラックスを算出する波動・粒子相互作用解析装置 (WPIA: Wave-Particle Interaction Analyzer) の開発が進められている。現在、我々はこのWPIAの観測手法を用いてプラズマの波動・粒子相互作用を室内実験にて直接観測する試みを行っている。本研究は直線型磁化プラズマ装置である東北大学QT-Upgrade Machineを用いて行った。QT-Upgrade Machineは直径0.2 m、長さ4.5 mの真空チャンバーを用いた装置であり、チャンバー内の実験領域においてECR放電による高電子温度プラズマ (~3 eV) と低温熱電子 (~0.2 eV) を重畳することで電子温度勾配 (ETG: electron temperature gradient) を形成することができる。電子温度勾配の制御によりETGモード (~0.5 MHz) が励起することを示したMoon et al. [Rev. Sci. Instrum., 2010] による実験では、ドリフト波モードのkHz帯の低周波揺動も同時に励起されることが報告されている。本研究ではこの低周波揺動を対象に、チャンバー内の揺動の電場ベクトルと電流ベクトルを同時に計測し、それらのベクトルからエネルギー交換量の算出を行う。計測には、電場ベクトル計測用のツインプローブと電流ベクトル計測用のマッハプローブを組み合わせたコンビネーションプローブを新たに開発し使用した。プローブを真空チャンバー内で可動させる機構を設けることにより、チャンバーの軸方向および動径方向、方位角方向の三成分ベクトルを計測可能である。現在は計測した電場ベクトルと電流ベクトルの内積演算から、相互作用におけるエネルギー交換量の定量的な評価を行うことを目指し、解析を進めている段階である。本講演では、コンビネーションプローブの性能評価に加え、観測された電場の揺動と電流の揺動の位相関係や、揺動の成長を捉えた過渡応答計測についての詳細な解析結果を報告する予定である。