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[PEM36-16] IMAP/VISIで観測された赤道電離異常に伴うO630nm発光特性
キーワード:国際宇宙ステーション, 大気光, 熱圏, 電離圏, 赤道異常, IMAP
低緯度電離圏F領域における特有の現象として赤道異常(EIA:Equatorial Ionization Anomaly)がある。EIAとは磁気赤道から電場により持ち上げられたプラズマが高高度で磁力線に沿って南北両半球へ降下することで発生する現象であり、プラズマの密度分布は赤道上で極小をとらず、その両側(磁気緯度約±15°)で極大をとる分布となる。このEIAに伴うO630nm発光に関するこれまでの研究は、主に地上からの光学ならびに電波観測に基づき行われてきた。そのため、広域の観測することが困難であり、EIAの南北の対称性や季節変化、地方時依存性などの特徴を詳細に調べることが出来なかった。ISS(国際宇宙ステーション)に搭載されたIMAP/VISIは、高度約400㎞から全経度と緯度約±52°の広範囲に渡って630nm大気光観測を行うことが可能であり、EIAに伴うO630nm発光のグローバル観測ができる。本研究ではこのISS-IMAP/VISI の利点を生かし、2012年9月から2013年12月の1年間以上に取得された約950パスのO630nm発光観測データを統計解析し、EIAに伴うO630nm発光の地方時依存性、経度分布、季節変動や南北非対称性、磁気嵐依存性などの時間・空間変動を明らかにすることを目的とする。データ解析手法について、まずO630nmの強度分布を導出し、これを緯度方向に積分した。また、解析イベント選定基準は、主に以下の4点を満たすものとした。(1)中緯度における大気光強度から決定された背景の大気光より強いピークを持つこと、(2)EIAに伴う増光の全領域が観測されていること、(3)南北両半球のEIAが分離していること、(4)月の位相が0.5(半月)以下の日、または0.5以上でも月が出ていない時間帯であること。データ解析の結果、EIAに伴うO630nm発光の地方時依存性については、日没から時間経過し深夜に行くに従い発光が減少する傾向が見られた。しかしながら、同じ地方時における発光強度の値の分散が大きい結果となった。この事実は、単なる地方時依存性に加えて経度依存性、季節依存性等の他の変動要因が重なっていることを示唆する。次に、EIAに伴うO630nm発光の季節依存性については、南北両半球とも、冬半球側でEIAに伴うO630nm発光強度がより強くなる結果が得られた。この事実は、地軸の傾きのために、冬半球では熱圏潮汐風が極向き風となり、電離圏イオンを押し下げる効果で解釈される。しかし、いずれの月においても発光強度に大きなばらつきを示した。またEIAに伴うO630nm発光強度の経度依存性について、秋分時 (2013年9月から10月)の観測データを用いて調べた。この結果、磁気赤道(dip equator) が地理赤道の南に位置する場所(200°~310°)では北半球においてEIAに伴うO630nm発光強度が南半球より大きくなり、これ以外では南半球で発光強度が大きくなる結果となった。これは熱圏潮汐風による電離圏上下変動による効果と考えられる。2013年3月の磁気嵐時におけるEIAに伴うO630nm発光強度変動については、Dst指数の絶対値が90以上の時に発光が小さくなる結果になった。またDst指数の絶対値が90以下の時には、Dst 指数とO630nm発光との間には明確な相関関係は見られなかった。また、赤道環電流発達時にO630nm発光強度の減少がみられ、この発光減少の原因として、赤道環電流発達時にRegion2電流系の昼間側の西向き電場が低緯度まで侵入し、EIA発達に影響を与えたことが考えられる。