18:15 〜 19:30
[PEM36-P01] 小型気球搭載を目的としたテレメトリおよび簡易運用システムの基礎開発
キーワード:気象観測気球, 係留気球, 成層圏, 高層大気, テレメータ, 組み込みシステム
1. はじめに
国内においてJAXA(宇宙航空研究開発機構)では科学観測用の高高度大気球が放球されている。特長として最高高度50 km程度まで上昇し、観測ロケットより安価かつ搭載機器の制限も少ないことから自由度の高い実験が可能であるが、大学等教育機関の研究室単位での大気球の独自開発は現実的に難しい。しかし近年の半導体センサーの普及により個人レベルでも打ち上げ可能な小型の気象観測気球(ラジオゾンデ)を用いて行う実験が海外で頻繁に行われるようになった (e.g. Near Space Ventures, Inc., 2013)。小型とはいえ直径6 ft(≒180 cm)の観測気球の場合には気球本体と余裕浮力を除いた搭載能力は質量ベースで2 kgほどが見込め、到達高度は35 km程度まで期待できる。しかし国内において気球の飛行経路、ペイロードの落下地点予測は正確には困難であり、放球リスクは依然として高い状況にある。本研究では、国内での気象観測気球を用いた理学観測・工学実験を大学教育機関レベルで実現することを将来目標とし、現在行なっている装置開発の取り組みについて報告する。
2. 装置開発
将来的に計画している気象観測気球の放球に向けて、係留バルーンをプラットフォームとした装置開発を行った。具体的には、市販の安価な小型バルーンに搭載できる250 g程度の小型テレメータとテレメトリデータを受信する地上局システムである。テレメータには無線モジュール、GPS、気圧高度、温湿度、カメラ、加速度、電子コンパス、電源モニターの各項目を監視するセンサーを搭載しており、各センサーの計測値が随時地上局に送信されるようになっている。
地上局システムでは、PC上で動作する気球運用支援ソフトウェアを新たに開発し、予め設定した地上局位置情報とセンサーデータを用いて計算したリアルタイム情報を操作者に視覚的に提供することができる。さらに、ソフトウェアが自動出力するKML形式ファイルを順次Google Earthに読み込むことで気球位置のリアルタイムマッピングを行うことが出来るほか、GPS位置情報から球面三角法で算出した気球方位角・仰角の情報を、開発したカメラ三脚搭載型トラッキングローテータに入力することで、小型の通信アンテナ等を常時気球方向に自動追尾することが可能である。
3. 実験結果
開発システムの動作評価として行った係留気球実験では、テレメトリ回線の極端な通信品質の低下という想定外の事象が発生し、地上局とテレメータ間の運用限界距離が約110 mと大幅に制限されてしまった。実験前に行った地上予備実験における270 mの通信距離(パケットロス率0%)の記録とは対照的である。トラッキングローテータの指向角計算は単独測位のGPS位置情報を利用しているため誤差は5から10 m程度あり、かつローテータの最大可動仰角が50°であったため近距離での動作評価はシビアな条件となるが、約110 mの通信距離範囲内では安定してバルーンを指向することができた。また、テレメータ、開発ソフトウェアは想定通りに動作し、特に問題となる点は見つからなかった。本発表では、装置開発の詳細と2014年1月の係留バルーン実験で得られたデータを発表する予定である。
国内においてJAXA(宇宙航空研究開発機構)では科学観測用の高高度大気球が放球されている。特長として最高高度50 km程度まで上昇し、観測ロケットより安価かつ搭載機器の制限も少ないことから自由度の高い実験が可能であるが、大学等教育機関の研究室単位での大気球の独自開発は現実的に難しい。しかし近年の半導体センサーの普及により個人レベルでも打ち上げ可能な小型の気象観測気球(ラジオゾンデ)を用いて行う実験が海外で頻繁に行われるようになった (e.g. Near Space Ventures, Inc., 2013)。小型とはいえ直径6 ft(≒180 cm)の観測気球の場合には気球本体と余裕浮力を除いた搭載能力は質量ベースで2 kgほどが見込め、到達高度は35 km程度まで期待できる。しかし国内において気球の飛行経路、ペイロードの落下地点予測は正確には困難であり、放球リスクは依然として高い状況にある。本研究では、国内での気象観測気球を用いた理学観測・工学実験を大学教育機関レベルで実現することを将来目標とし、現在行なっている装置開発の取り組みについて報告する。
2. 装置開発
将来的に計画している気象観測気球の放球に向けて、係留バルーンをプラットフォームとした装置開発を行った。具体的には、市販の安価な小型バルーンに搭載できる250 g程度の小型テレメータとテレメトリデータを受信する地上局システムである。テレメータには無線モジュール、GPS、気圧高度、温湿度、カメラ、加速度、電子コンパス、電源モニターの各項目を監視するセンサーを搭載しており、各センサーの計測値が随時地上局に送信されるようになっている。
地上局システムでは、PC上で動作する気球運用支援ソフトウェアを新たに開発し、予め設定した地上局位置情報とセンサーデータを用いて計算したリアルタイム情報を操作者に視覚的に提供することができる。さらに、ソフトウェアが自動出力するKML形式ファイルを順次Google Earthに読み込むことで気球位置のリアルタイムマッピングを行うことが出来るほか、GPS位置情報から球面三角法で算出した気球方位角・仰角の情報を、開発したカメラ三脚搭載型トラッキングローテータに入力することで、小型の通信アンテナ等を常時気球方向に自動追尾することが可能である。
3. 実験結果
開発システムの動作評価として行った係留気球実験では、テレメトリ回線の極端な通信品質の低下という想定外の事象が発生し、地上局とテレメータ間の運用限界距離が約110 mと大幅に制限されてしまった。実験前に行った地上予備実験における270 mの通信距離(パケットロス率0%)の記録とは対照的である。トラッキングローテータの指向角計算は単独測位のGPS位置情報を利用しているため誤差は5から10 m程度あり、かつローテータの最大可動仰角が50°であったため近距離での動作評価はシビアな条件となるが、約110 mの通信距離範囲内では安定してバルーンを指向することができた。また、テレメータ、開発ソフトウェアは想定通りに動作し、特に問題となる点は見つからなかった。本発表では、装置開発の詳細と2014年1月の係留バルーン実験で得られたデータを発表する予定である。