日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM36_28PO1] 大気圏・電離圏

2014年4月28日(月) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*大塚 雄一(名古屋大学太陽地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(独立行政法人 情報通信研究機構)

18:15 〜 19:30

[PEM36-P18] HFDを用いた地震に伴う電離圏擾乱の検出

*高星 和人1中田 裕之1鷹野 敏明1冨澤 一郎2 (1.千葉大学大学院工学研究科、2.電気通信大学宇宙・電磁環境研究センター)

キーワード:電離圏, HFD, 地震, 音波, 大気重力波, 断層

これまでの研究より、大規模な地震の発生後に電離圏において擾乱が起こることが多く報告されている。これは、地面の変動や津波により生じた音波や大気重力波が上空に伝搬したためと考えられる。電気通信大学が行っている短波ドップラー(HFD)観測は、受信周波数のドップラーシフトより電離圏速度を直接求めることができるため、地震による擾乱を観測する手法として適していると考えられる。HFD観測では、5006 kHz、8006 kHzの電波が送信され、各受信点においてこれらの電波を受信することで電離圏下部の擾乱観測を行っている。今回は5006 kHzの受信結果を用いて解析を行った。HFD観測データの存在する2003年以降のM6以上の地震55事例について、地震による電離圏擾乱の検出を行った。変動の検出はすべて目視で行い、震源からの距離より予想される変動発生までの時間を考慮した上で、地震発生後に受信周波数に急激な落ち込みや上昇が現れたものを変動検出例とした。
結果として、全55事例中14事例において変動が検出され、その中で最も規模の小さいものはM6.4であった。M6.4以上の地震でも変動が検出されなかった事例も存在するが、その原因の一つとして変動の埋もれがある。夜間および日の出、日の入り時は電離圏が不安定となるため、受信周波数が荒れ、地震による変動との判別が困難となることが多くあった。また、発生した地震の震源付近に観測点が存在せず、変動が検出されない例もみられた。これらを考慮すると、電離圏の安定している時間帯に観測点付近で発生した地震ならば、今回変動が検出された最小規模のM6.4よりも小さな地震でも変動の検出が期待される。
また、検出された事例について、断層のずれの向きとHFDデータでの変動との対応に着目した。日本で発生する地震のほとんどは、逆断層型地震である。逆断層型地震では上盤がずり上がる方向に動くため、これによって大気中に励起される音波の第一波の向きは上方であると考えられる。実際に、変動が検出された例の多くは、電離圏が初めに上向きに速度を持っていることを示していた。さらに、上盤がずり下がる正断層型では変動の向きが逆向きとなるか検証を行った。正断層型地震である2011年の4月11日に発生した福島県浜通り地震について、三つの観測点(飯舘、菅平、木曽)のデータを用いて変動の向きを確認した。その結果、菅平観測点では電離圏速度が最初に下向きになった後に上向きになるというデータが得られた。しかし、他の二点では電離圏速度は上向きになった後に下向き、もしくは上向きのみ、というデータが得られた。従って、電離圏の変動は、逆断層、正断層によって単純に分類されるわけではなく、観測点直下付近の地震計を用いてのより詳細な解析が必要であると考えられる。