日本地球惑星科学連合2014年大会

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セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM37_30PO1] 磁気圏構造とダイナミクス

2014年4月30日(水) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*三好 由純(名古屋大学太陽地球環境研究所)、長谷川 洋(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

18:15 〜 19:30

[PEM37-P06] 磁気圏静穏時における磁気圏尾部から注入される 粒子の軌道とエネルギー分散

*山内 里子1長井 嗣信2 (1.東京工業大学、2.東京工業大学)

キーワード:磁気圏, 粒子のインジェクション, エネルギー分散, Tsyganenko, 軌道計算, 磁気静穏時

2007年ごろから磁気圏静穏時に地球半径の10倍程度の朝側から昼側にかけた領域で、数keV‐数十keVの荷電粒子のフラックスが増加するインジェクションが人工衛星GeotailやTHEMISで観測されている。このインジェクションは、電子とイオンの両方でみられる場合と電子のみ見られる場合がある。また、これまでにサブストームが起こっているときに静止軌道で観測されてきたインジェクションとは違い、磁気圏では大きな磁場の変動はなく静穏な状態のときに観測されている。観測された荷電粒子のフラックスは方位角方向に等方的であり、粒子がどのようにドリフトしてきたかは明らかではない。このインジェクションはエネルギー分散を伴っており、粒子のエネルギーごとのフラックスの時間変化を見ると、エネルギーが高い粒子の方がエネルギーが低い粒子よりも早くフラックスが増加し始めていることがわかる。エネルギーによってフラックスの増加に時間差が生じるのは、荷電粒子のドリフト速度がエネルギーによって異なるためであると考えられる。これまでに、我々は磁気圏の赤道面において、磁場をダイポール磁場、電場を朝側から夕方側に向かう一様な対流電場と地球中心に向かうコローテーション電場を足し合わせた電場として荷電粒子のドリフト速度に与え、荷電粒子の軌道を計算した。その結果、対流電場が大きいほど時間差が短く、小さいほど時間差が長くなることがわかった。また、軌道計算の結果では、電子は尾部方向から来て朝側を周る軌道をとる。これは、GeotailとTHEMISの同時多点観測からも磁気圏の夜側ほど早くインジェクションが観測されていること、また、Geotailで観測されたエネルギーによるフラックス増加開始の時間差が昼側ほど長くなることと一致する。逆に、イオンは尾部方向から来て夕方側を周る軌道をとるという計算結果を得た。赤道平面では、電子とイオンが逆向きに地球の周りをドリフトするため、荷電粒子が磁気圏尾部のある領域から同時に注入され、朝側の領域に到達する場合、イオンは電子よりも長い距離をドリフトしてくるので時間がかかる。これは、Geotailによって朝側の領域で電子のインジェクションが観測された数分~数十分後にイオンのインジェクションが観測されていることと一致している。これらのことから、電子は磁気圏の朝側の領域を夜側から昼側の方向へドリフトし、イオンは逆に夕方の領域を夜側から昼側の方向へドリフトすることがわかった。しかし、ダイポール磁場で与えられる範囲では、観測されるようなエネルギー分散を説明することはできなかった。地球磁気圏は太陽風によって引き伸ばされているため、地球半径の10倍よりも尾部の領域では、磁力線が引き伸ばされ、ダイポール磁場とは異なった磁場の形状をしている。観測された荷電粒子は、この尾部の領域から注入されてきたと予測できる。我々は、これらの注入されてきた粒子の軌道とエネルギー分散がどのような特徴を持つのかより詳しく調べるため、荷電粒子の軌道計算をするにあたって、より現実的な磁気圏の磁場のモデルを与えるために、磁気圏における経験的な磁場モデルであるTsyganenkoモデルを用いた。磁気圏静穏時において数keV-数十 keVの粒子がどのような軌道をとるのか、また、尾部のある領域から注入された荷電粒子が、内部磁気圏に到達するまでにどのようなエネルギー分散を持つのか、これらの観測結果と軌道計算を組み合わせて考察する。