11:40 〜 11:55
[PPS02-P02_PG] 火星におけるダスト巻き上げスキームの DCPAM への実装とそれを用いた地表面ダストフラックス診断実験
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:ダスト, 火星, 大気大循環モデル
火星ではダスト循環が大気熱構造に影響しており, 大気構造を決める重要な要素となっている (Gierasch and Goody, 1968). ダスト循環過程には, 地表面からのダスト巻き上げ, 乱流拡散, 移流, 重力沈降がある. その中でもダスト巻き上げ過程ではモデルで解像された風による巻き上げとモデルで解像できない塵旋風 (ダストデビル)による巻き上げを考慮する必要がある. 各国の研究グループでは, これらの過程に関するパラメタリゼーションスキームを組み込んだ大気大循環モデルによる計算が行われている. 例えば Kahre et al.(2006) の数値実験では, 完全にではないが, 北半球の秋から冬にかけて大気ダスト量が増加する季節変化の特徴を捉えることができている. これに対して, 我々が開発を進めてきた大気大循環モデル DCPAM (高橋他, 2012) では, 上記のダスト過程を組み込んでいない状況であった. 本研究では, DCPAM にダスト過程スキームを実装し, ダスト循環に関して考察するための数値実験を行うことを目的とする. 将来的には, 未だどのモデルでも再現できていない火星のダスト分布の年々変動に関する考察に進むことを予定している. ここでは, 上記のダスト過程の一つであるモデルで解像された風によるダスト巻き上げスキームを DCPAM へ実装する. 更に, ダスト巻き上げスキームの振る舞いを調べるために放射的に不活性なダストをトレーサーとしたトレーサー巻き上げ実験を行い, その結果と Kahre et al.(2006) の結果を比較する.
ここで用いるモデルは地球流体電脳倶楽部にて開発されている大気大循環モデル DCPAM である. DCPAM では 3 次元球面プリミティブ方程式を用いている. 放射過程では CO2 と大気ダストを考慮し, Takahashi et al.(2003, 2006) のスキームを用いる. 放射スキームに与えるダスト分布は固定したものを用いる. 乱流過程は Mellor and Yamada (1974) の方法に従って決めた鉛直拡散係数を用いて評価する. 地表面過程は Louis et al.(1982) の方法に従って評価する. 各パラメータには火星における一般的なパラメータを用いる. 地表面の熱慣性, アルベド, 地形高度にはマーズグローバルサーベイヤーの観測結果を用いる. 水平離散化にはスペクトル法を用い全波数 21 で打ち切りを行う, 鉛直方向には差分法を用い, 鉛直層数は 32 とする. 積分時間は 3 火星年であり, 最後の 1 火星年分を解析に用いた.
今回, ダスト巻き上げスキームとして KMH スキーム(Kahre et al., 2006) と呼ばれるものを DCPAM へ実装した. これを用いて地表面ダストフラックス計算を行った. その結果, Kahre et al.(2006) のモデル計算の結果と季節, 位置ともに類似した. 具体的には北半球の秋から冬にかけての北緯 50 度付近と南緯 30 度付近でダストが強く巻き上がっているという結果となった. 北緯 50 度付近では東西波数 1, 周期 6 火星日の東進する波の影響で多く巻き上がっていると想像される. この波は傾圧不安定波に関係すると想像される(Briggs et al., 1979). また, 南緯 30 度付近では東西波数 1, 周期 1 火星日の西進する波の影響で多く巻き上がっていると想像される. この波は一日周期熱潮汐波だと想像され (Joshi et al., 1997), 地方時で 16 時にダストが巻き上がりやすい. ここの結果では定性的には先行研究と一致しているが, 定量的には完全に一致していない. 例えば, 本モデルのダストフラックスは Kahre et al.(2006) よりも北極の極冠で一桁大きくなっている. この結果は鉛直層の厚さと乱流混合の評価の仕方に関係すると思われる. ここではモデルで解像された風によるダスト巻き上げスキームが実装できたので, 現在ダストデビルによるダスト巻き上げスキームの実装を進めている. 順次, 移流過程, 重力沈降過程も含んだ実装実験を行っていく予定である.
ここで用いるモデルは地球流体電脳倶楽部にて開発されている大気大循環モデル DCPAM である. DCPAM では 3 次元球面プリミティブ方程式を用いている. 放射過程では CO2 と大気ダストを考慮し, Takahashi et al.(2003, 2006) のスキームを用いる. 放射スキームに与えるダスト分布は固定したものを用いる. 乱流過程は Mellor and Yamada (1974) の方法に従って決めた鉛直拡散係数を用いて評価する. 地表面過程は Louis et al.(1982) の方法に従って評価する. 各パラメータには火星における一般的なパラメータを用いる. 地表面の熱慣性, アルベド, 地形高度にはマーズグローバルサーベイヤーの観測結果を用いる. 水平離散化にはスペクトル法を用い全波数 21 で打ち切りを行う, 鉛直方向には差分法を用い, 鉛直層数は 32 とする. 積分時間は 3 火星年であり, 最後の 1 火星年分を解析に用いた.
今回, ダスト巻き上げスキームとして KMH スキーム(Kahre et al., 2006) と呼ばれるものを DCPAM へ実装した. これを用いて地表面ダストフラックス計算を行った. その結果, Kahre et al.(2006) のモデル計算の結果と季節, 位置ともに類似した. 具体的には北半球の秋から冬にかけての北緯 50 度付近と南緯 30 度付近でダストが強く巻き上がっているという結果となった. 北緯 50 度付近では東西波数 1, 周期 6 火星日の東進する波の影響で多く巻き上がっていると想像される. この波は傾圧不安定波に関係すると想像される(Briggs et al., 1979). また, 南緯 30 度付近では東西波数 1, 周期 1 火星日の西進する波の影響で多く巻き上がっていると想像される. この波は一日周期熱潮汐波だと想像され (Joshi et al., 1997), 地方時で 16 時にダストが巻き上がりやすい. ここの結果では定性的には先行研究と一致しているが, 定量的には完全に一致していない. 例えば, 本モデルのダストフラックスは Kahre et al.(2006) よりも北極の極冠で一桁大きくなっている. この結果は鉛直層の厚さと乱流混合の評価の仕方に関係すると思われる. ここではモデルで解像された風によるダスト巻き上げスキームが実装できたので, 現在ダストデビルによるダスト巻き上げスキームの実装を進めている. 順次, 移流過程, 重力沈降過程も含んだ実装実験を行っていく予定である.