日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS02_28PO1] Mars

2014年4月28日(月) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*佐藤 毅彦(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部)、石渡 正樹(北海道大学大学院理学院宇宙理学専攻)、松岡 彩子(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系)、高橋 芳幸(惑星科学研究センター)、佐々木 晶(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)、宮本 英昭(東京大学総合研究博物館)

18:15 〜 19:30

[PPS02-P05] (Fe,Ni)3S相の状態方程式と火星内部構造への適用

赤木 俊介1、*境 毅1平尾 直久2 (1.地球深部ダイナミクス研究センター、愛媛大学、2.高輝度光科学研究センター)

キーワード:火星核, 状態方程式, 火星下部マントル

火星内部は、地球同様に地殻、マントル、核の層構造を持つ。特にマントルは上部マントル・マントル遷移層・下部マントルに分かれるが、下部マントルが存在するかどうかは核マントル境界の深さによって決定される。火星の核マントル境界の深さは、マントルと核の密度分布と火星の総質量から決定される。火星の核には鉄の他に硫黄が含まれていると考えられ、密度についてはこれまでFeとFeSの混合物として算出されていた (e.g., Urakawa et al., 2004)。しかし、火星の核に相当する圧力ではFe3Sという中間化合物が現れることが分かっており(Fei et al., 2000)、この相について考慮する必要がある。またSNC隕石に基づく化学モデルではニッケルの存在も示唆されていることから、ニッケルの密度に与える影響も考慮する必要がある。
 我々はダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧実験を行い、ニッケルを固溶する(Fe0.89,Ni0.11)3S相について火星核に相当する圧力での状態方程式を決定した。γ-Fe (Tsujino et al., 2013), γ-FeNi (Tsujino, 2012), Fe3S (Seagle et al., 2006), および(Fe0.89,Ni0.11)3Sの状態方程式を使って算出された密度に対して線形回帰分析を行い、ニッケルと硫黄が密度に与える効果について明らかにした。SNC隕石に基づく化学モデルによると火星の核は16 wt.%Sと7 wt.%Ni となっている(Sanloup et al., 1999)。さらに核が高温で全体的に融解しているとした場合(Fei and Bertka, 2005)、2%程度の融解による体積膨張(Anderson and Isaal,2000; Laio et al., 2000)も考慮する必要がある。この場合に核マントル境界深さを算出すると、火星の下部マントルは存在できない可能性があることが分かった。