日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS21_29AM1] 惑星科学

2014年4月29日(火) 09:00 〜 10:45 416 (4F)

コンビーナ:*奥住 聡(東京工業大学大学院理工学研究科)、黒澤 耕介(千葉工業大学 惑星探査研究センター)、座長:保井 みなみ(神戸大学自然科学系先端融合研究環重点研究部)、黒澤 耕介(千葉工業大学 惑星探査研究センター)

10:00 〜 10:15

[PPS21-05] 粉体対流の速度スケーリングとそのレゴリス移動の時間スケールへの応用

*山田 智哉1桂木 洋光1 (1.名古屋大学大学院 環境学研究科)

キーワード:粉体対流, スケーリング, 重力加速度, レゴリス移動, イトカワ

小惑星のイトカワには,表面のレゴリスが流動化・分級したと考えられる痕跡がある [1].また,サンプルリターンにより持ち帰られた粒子の分析から,その宇宙線照射年代はおよそ8Myrと比較的若いことが分かった[2].これらの観測結果を説明するための仮説の一つとして,“天体衝突起源の地震動でイトカワ表面のレゴリスが流動化,移動することによって表面が更新された可能性”が提唱されている[1].実際,地上の室内実験ではレゴリスのような粉体に振動を加えると,粉体対流が生じることが知られている(e.g. [3]).しかし,イトカワのような微小重力環境下で生じる粉体対流の対流速度に関する定量的な議論はこれまで十分になされてない.一般に,室内実験で重力を変化させることは難しい.そこで,本研究では室内実験で粉体対流の対流速度と重力加速度gの満たすスケーリング関係を次元解析により求めた.得られたスケーリング関係から対流速度の重力依存性を実効的に求めた.また,得られたスケーリング関係から粉体対流によるレゴリス粒子の表面移動時間の推定を試みた.実験では粉体試料として直径d=0.4,0.8,2 mmのガラスビーズを用いた.粉体を入れる容器は内半径R=16.5,37.5,75 mm の円筒形アクリルセルを用い,ガラスビーズを高さH=20~110 mmの範囲で積層させた.電磁式の振動装置(EMIC 513-B/A)で容器全体に鉛直振動を加え,最大振動加速度と重力加速度の比を表すΓΓ=A(2πf)2/gA:振動振幅,f:振動数,g:重力加速度)を2~6の間で,fを100~300 Hz の間で変化させ,粉体対流を発生させた.円筒容器壁面での粉体の流れ場を高速度カメラ(Photoron SA-5)により1000 fps で撮影し,鉛直方向の対流速度vzをPIV(Particle Image Velocimetry)を用いて算出した.vzの最大値vzmaxを重力と粒子径が作る特徴速度(gd)1/2で無次元化し,これと振動と重力のエネルギーバランスを表す無次元パラメーターS=(2πAf)2/gd[4]および無次元システムサイズL=(RH)1/2/dの2つのコントロールパラメーターとのスケーリング関係を求めた.系統的な次元解析の結果,vzmaxは上記の無次元数を用いてvzmax/(gd)1/2S0.47L0.82と表されることが分かった.SLにその定義を代入すると,重力依存性はΓ一定の条件の下でvzmaxg0.97と表せることが分かった.これより,微小重力環境では対流速度はgにほぼ比例して遅くなるとが明らかになった.一方,本実験ではLは無次元の対流ロールサイズともいえる.得られたスケーリングから,Lを無次元対流ロールサイズとみなすことでレゴリス粒子の表面移動時間を見積もると,対流ロールサイズの時間スケールへの影響が少なくなることも分かった.本発表では粉体対流による粒子の移動と宇宙線照射年代8Myrとの整合性の詳細検討の結果についても議論する.[1]H. Miyamoto et al., Science 316, 1011 (2007)[2]K. Nagao et al., Science 333, 1128-1131 (2011)[3]A. Garcimartín et al., Physical Review E 65, 031303 (2002).[4]P. Eshuis et al., Physics of Fluids 19, 123301-1 (2007)