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[PPS21-11] 原始太陽系星雲中で集積する火星の大気形成と熱進化
火星は寡占成長により形成した原始惑星の唯一の生き残りと考えられている. 多数の微惑星が原始火星へ衝突することで, 衝撃加熱による融解が引き起こされ, コアが形成される. これは火星由来隕石の年代学からの示唆と調和的である. これらの衝突はまた,微惑星から H2O 等の揮発性成分の脱ガスも引き起こし, 大気形成に貢献したと考えられる. 寡占成長は原始太陽系星雲ガス中で進行するため, 集積成長中の原始火星は星雲ガスおよび, 脱ガス成分の双方からなる原始大気を獲得していた可能性が高い. このようなハイブリッド型原始大気は惑星表面の熱収支や惑星表面-内部間での揮発性成分の分配に重要な役割を果たした可能性がある. そこで, 本研究では, 星雲ガス, 脱ガス成分の 2 層からなるハイブリッド型原始大気を想定した 1 次元放射対流平衡モデルを構築した. ここで, 上層は星雲ガス成分由来のH2-He 大気層, 一方下層は微惑星脱ガス成分由来の H2O に富んだ大気層を仮定する. また, 輻射輸送には, H2, He および H2O による吸収を考慮する. 放射対流平衡構造は, 集積エネルギーフラックスと均衡する熱的光度および, 脱ガス成分大気量の関数として得られる. H2, He から成る脱ガス大気成分のモル比を, 金属-シリケイトとの化学平衡状態にある 1:5 とした. また, 火星の集積時間は,惑星形成論および年代学的に矛盾のない 106- 107 年と置いた.H2-He のみで構成される大気の場合, 地表面温度は 700 K 以上になることはない. 一方, 脱ガス成分の大気量が火星質量の1% より多ければ, 地表面温度は岩石の融点の目安である1500 Kを超える. もし微惑星が H2O をはじめとする揮発性成分を十分に含有していたとすると, 集積中の火星には, 原始大気の保温効果によって, 惑星全体を覆うマグマオーシャンが形成した可能性がある. このような全球的マグマオーシャンは, コアの形成やマグマや金属鉄に溶解した揮発性成分の内部輸送を促進させた可能性がある.