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[PPS21-20] Super-Earthの大気散逸進化:惑星組成と起源への制約
キーワード:系外惑星, 大気散逸, 組成, スーパーアース
ケプラー宇宙望遠鏡によるトランジット観測を始めとする近年の観測の進展により、低質量の系外惑星が次々に検出されてきている。その中で多数発見されている地球サイズから海王星サイズの惑星は総称してSuper-Earthと呼ばれている。太陽型星の3割ほどがこのSuper-Earthを持つと見積もられており(Howard et al., 2012)、Super-Earthは宇宙に数多く存在する惑星である。従って、Super-Earthの組成、ひいては起源を理解することは、惑星の形成と進化を理解する上で極めて重要である。 本研究では特に、質量・半径がともに測定されているSuper-Earthを用いて、理論計算との比較をもとにSuper-Earthの組成を決定する要素について議論する。Super-Earthの組成の特徴として、水素ヘリウムエンベロープの有無が挙げられる。岩石を主体とすると考えられる高密度のSuper-Earthが存在する一方、低密度で形成時に獲得したエンベロープを保持していると考えられるSuper-Earthも存在する。このような特徴は惑星質量・軌道半径などの違いが原始惑星系円盤ガス捕獲量の違いが生まれたか、もしくは形成後の中心星XUV(X-rayとEUV)放射駆動の大気散逸によって一部のSuper-Earthからエンベロープが失われたこと(Lopez et al., 2012など)に起因すると考えられる。また、Super-Earthの組成については、質量・半径が測定されていても、岩石・氷・水素ヘリウムの存在比が一意に決定できないという、組成の縮退の問題がある。大気透過光の多波長観測が最も直接的に組成を制約する方法であるが、最近のハッブル宇宙望遠鏡を用いた高精度観測では極めて平坦なスペクトルが観測され、大気上層に雲が存在している可能性が示唆された(Kreidberg et al., 2014; Knutson et al., 2014)。Super-Earthの大気において一般的に雲が存在する場合、観測的に大気組成を制約することが困難となる。 本研究では、この1.Super-Earthのエンベロープの有無の起源, 2.Super-Earthの組成の縮退という問題について、大気散逸進化計算から制約を行う。特に今回の発表では中心星のスペクトル型に着目する。恒星はスペクトル型によって全波長積分した光度とXUV光度の比が異なるため、同じ平衡温度となる軌道半径で比較するとXUV照射量が異なる。この性質を用いて、Super-Earthのエンベロープの有無の起源における形成過程の影響と大気散逸過程の影響を分離して理解することを試みる。本研究の大気散逸進化計算の結果得られたエンベロープを失う閾値となる軌道半径・平衡温度は中心星スペクトル型ごとに異なるが、質量・半径の測定されているSuper-Earthが発見されているG型星、K型星、M型星のそれぞれについて、Super-Earthのエンベロープの有無の傾向と整合的である。このことから、Super-Earthのエンベロープの有無の起源は、大気散逸によるエンベロープの剥ぎ取りであることが示唆される。この場合、Super-Earthの組成の縮退の問題についても、やや低密度のSuper-Earthの中で中心星に十分近いものはエンベロープをもたず、氷組成であることが示唆される。そのような中心星近傍の氷惑星はスノーライン以遠で形成し、惑星移動を経験したと考えられる。 本研究ではさらに大気散逸モデルの不定性や恒星のXUV光度進化の不定性の影響を評価し、結果の妥当性について議論を行う。