18:15 〜 19:30
[PPS21-P14] 氷衛星表面を模擬した氷・砂混合物に対するクレーター形成実験
キーワード:氷衛星, 氷・砂混合物, 衝突クレーター, 高速度衝突実験
はじめに:氷衛星、火星凍土、小惑星ケレスの地殻などは氷と岩石粒子の混合物からなると言われており,特に小惑星ケレスは,NASAの小惑星探査機Dawnが2015年に到着して観測が行われる予定である.このケレスは,小惑星帯のメインベルトにあるので,その氷地殻には,様々なタイプの小惑星が衝突してクレーターを作る.衝突クレーターのサイズや形状は,衝突物質や地殻の種類,さらに衝突速度や地殻の内部構造により大きく変化する.そこで,ケレス表面のクレーターを調査することにより,衝突した小惑星の種類やその頻度,または,ケレス地殻の岩石含有率や内部構造などに関する情報を得ることができる.このような調査を実現するには,室内実験での充分な準備が必要である.すなわち,氷や氷・岩石粒子混合物,さらには内部構造を持つ表面に形成されるクレーターの特徴を明らかにする必要がある.加えて,それらの特徴が衝突物質の種類によりどのような影響を受けるかを詳細に調べる必要がある.
これまでクレーター形成効率に関する系統的な実験は主に純氷標的でのみ行われてきた.純氷に関しては0.1km/sから7km/sまでの広い範囲で,数種類の弾丸を用いたクレーター形成実験が行われている.しかしながら,氷・岩石粒子混合物試料に対しては限られた条件でしか実験は行われてきていない。特に小惑星帯におけるケレスの氷地殻への衝突を考えると衝突速度4km/s以上での高速衝突実験を実現する必要があるが,その例は少ない.そこで本研究では1km/sを超える高速度領域で,広い密度と強度範囲を持つ数種類の弾丸を用いて氷・岩石粒子混合物試料へのクレーター形成実験を行った.そして,クレーター形状やクレーター形成効率が純氷と比べてどのように変化するのかを調べることにした.
実験方法:実験は2013年度から新しく稼働し始めた神戸大学の二段式水素ガス銃を用いて行った。ケレス地殻を模擬した氷・岩石粒子標的試料は、粒径500μmの石英砂と水を質量比80〜83wt%になるように混ぜて準備した.その混合物を直径15cm・高さ5〜10cmの円筒金属容器に入れ、-23から-15℃の冷凍庫で凍らせて作製した。弾丸には,直径2mmのアルミ球,ジルコニア球,チタン球を用いた.それぞれの密度は,2.7g/cm3,5g/cm3,5.7g/cm3,である.これらの弾丸をナイロン製のサボに装填して速度1.6〜5.1km/sで発射した.標的試料は,衝突直前に衝突チャンバー内に設置し,真空引きを行い周囲と断熱する.実験時のチャンバー内の圧力は200〜230Paの範囲内である。クレーター形成過程はイメージコンバーターカメラにより5μs毎に18回撮影した.この撮影画像から,衝突時のイジェクタ形状やその成長速度を調べて純氷との比較を行った.実験後は、試料に残されたクレーターの形状をノギスにより計測した。
実験結果:今回の実験から氷・岩石粒子混合試料では純氷試料と比べてSpallationが,どの弾丸,速度においても起きにくいことがわかった。このSpallに関する特徴から,深さ直径比の速度依存性・弾丸密度依存性も純氷試料とは異なる。クレーター直径は衝突エネルギーが同じ場合、氷・岩石粒子混合試料では純氷試料の約半分となることがわかった。Hiraoka et al (2004) では,氷・岩石混合物の岩石含有率を変えながら,ほぼ一定の弾丸エネルギーでクレーター形成実験を行った.この衝突実験と我々の実験結果と比較し,クレーター直径に関する特徴を調べることにする.結果,Hiraoka たちが行っていない高い含有率80wt%のデータは,彼らの含有率50%のデータとほぼ一致し,50%までの直径減少傾向が,80wt%までは続かないことを明らかにした.その結果,80〜100wt%の間で急激にクレーターが小さくなることが予想される。これは、0〜80wt%においては氷が強度を支配しているのに対して80〜100wt%では岩石自身が強度を支配するようになるからだと考えられる。また、Housen and Holsapple (2012) で提案されたクレータースケール則を用いて氷・岩石粒子混合試料に対する無次元パラメーターπRとπYの関係を求めた。80wt%岩石粒子試料の動的引っ張り強度は測定されていないので,30wt%の混合物試料の強度の値を用いた.この場合,πRとπYの関係は氷の場合と大きく異なった。そこで80wt%岩石粒子混合試料の強度を,例えば100MPaにして,再度関係を求めてみると純氷の関係とほぼ一致するようになった.もしこれが正しいとすると80wt%の岩石粒子混合試料の動的引っ張り強度は純氷の強度の6倍近くなることがわかった。
これまでクレーター形成効率に関する系統的な実験は主に純氷標的でのみ行われてきた.純氷に関しては0.1km/sから7km/sまでの広い範囲で,数種類の弾丸を用いたクレーター形成実験が行われている.しかしながら,氷・岩石粒子混合物試料に対しては限られた条件でしか実験は行われてきていない。特に小惑星帯におけるケレスの氷地殻への衝突を考えると衝突速度4km/s以上での高速衝突実験を実現する必要があるが,その例は少ない.そこで本研究では1km/sを超える高速度領域で,広い密度と強度範囲を持つ数種類の弾丸を用いて氷・岩石粒子混合物試料へのクレーター形成実験を行った.そして,クレーター形状やクレーター形成効率が純氷と比べてどのように変化するのかを調べることにした.
実験方法:実験は2013年度から新しく稼働し始めた神戸大学の二段式水素ガス銃を用いて行った。ケレス地殻を模擬した氷・岩石粒子標的試料は、粒径500μmの石英砂と水を質量比80〜83wt%になるように混ぜて準備した.その混合物を直径15cm・高さ5〜10cmの円筒金属容器に入れ、-23から-15℃の冷凍庫で凍らせて作製した。弾丸には,直径2mmのアルミ球,ジルコニア球,チタン球を用いた.それぞれの密度は,2.7g/cm3,5g/cm3,5.7g/cm3,である.これらの弾丸をナイロン製のサボに装填して速度1.6〜5.1km/sで発射した.標的試料は,衝突直前に衝突チャンバー内に設置し,真空引きを行い周囲と断熱する.実験時のチャンバー内の圧力は200〜230Paの範囲内である。クレーター形成過程はイメージコンバーターカメラにより5μs毎に18回撮影した.この撮影画像から,衝突時のイジェクタ形状やその成長速度を調べて純氷との比較を行った.実験後は、試料に残されたクレーターの形状をノギスにより計測した。
実験結果:今回の実験から氷・岩石粒子混合試料では純氷試料と比べてSpallationが,どの弾丸,速度においても起きにくいことがわかった。このSpallに関する特徴から,深さ直径比の速度依存性・弾丸密度依存性も純氷試料とは異なる。クレーター直径は衝突エネルギーが同じ場合、氷・岩石粒子混合試料では純氷試料の約半分となることがわかった。Hiraoka et al (2004) では,氷・岩石混合物の岩石含有率を変えながら,ほぼ一定の弾丸エネルギーでクレーター形成実験を行った.この衝突実験と我々の実験結果と比較し,クレーター直径に関する特徴を調べることにする.結果,Hiraoka たちが行っていない高い含有率80wt%のデータは,彼らの含有率50%のデータとほぼ一致し,50%までの直径減少傾向が,80wt%までは続かないことを明らかにした.その結果,80〜100wt%の間で急激にクレーターが小さくなることが予想される。これは、0〜80wt%においては氷が強度を支配しているのに対して80〜100wt%では岩石自身が強度を支配するようになるからだと考えられる。また、Housen and Holsapple (2012) で提案されたクレータースケール則を用いて氷・岩石粒子混合試料に対する無次元パラメーターπRとπYの関係を求めた。80wt%岩石粒子試料の動的引っ張り強度は測定されていないので,30wt%の混合物試料の強度の値を用いた.この場合,πRとπYの関係は氷の場合と大きく異なった。そこで80wt%岩石粒子混合試料の強度を,例えば100MPaにして,再度関係を求めてみると純氷の関係とほぼ一致するようになった.もしこれが正しいとすると80wt%の岩石粒子混合試料の動的引っ張り強度は純氷の強度の6倍近くなることがわかった。