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[PPS22-09] 月隕石におけるシリカ多形の形成過程の解明
キーワード:月隕石, シリカ多形, 高圧鉱物, 天体衝突, 衝突実験, 静的圧縮実験
月面に広く分布する大小様々なクレーターやレゴリスは、隕石や微惑星が月や地球にこれまでに幾度と無く衝突した痕跡であり、このような天体衝突が月や地球の進化、例えばジャイアント・インパクトによる初期地球や月の形成、さらには後期重爆撃期における大量の隕石群の衝突と生命の誕生に寄与したことが知られている。通常、天体衝突の際に発生した高温高圧条件により、惑星から放出された隕石には種々の高圧鉱物が存在する。しかし、月のような大気の無い天体の場合、高圧鉱物が隕石中に残存することは難しいと考えられてきた(Papike 1998; Lucey et al., 2006)。しかし、最近では月隕石であるAsuka-881757やNWA4734からコーサイトやスティショバイト、ザイフェルタイトなどのシリカ鉱物の高圧相が発見されており、高圧相の生成条件から月面における天体衝突過程の詳細が明らかとなってきた(Ohtani et al. 2011; Miyahara et al. 2013)。天体衝突時の変成条件は、衝撃銃を用いた動的圧縮実験とマルチアンビルプレスやダイヤモンドアンビルセル(DAC)による静的圧縮実験をもとに決定されている。シリカ鉱物の場合、石英やシリカガラスを出発試料とした高圧実験については数多くの研究がなされているものの、月面に存在すると考えられているクリストバライトやトリディマイトなどのシリカ多形については報告例が少ない。高圧相への転移圧力や温度は出発試料の結晶構造に依存することから(Kubo et al. 2012; Bläβ 2013)、月面における衝突過程の詳細を明らかにするためには種々のシリカ多形に対する高圧実験が必須である。本研究では、産状を異にする月隕石(斜長岩質礫岩、玄武岩および、斑れい岩質礫岩)を対象としたラマン分光分析、透過型および走査型電子顕微鏡観察ならびにX線回折分析からシリカ鉱物の同定ならびに記載を行い、高圧実験の結果と比較することで、月面におけるシリカ鉱物の形成過程の解明ならびに各隕石が被った衝撃変成作用の圧力および温度条件の推定を行う。