日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS22_1PO1] 隕石と実験からみた惑星物質とその進化

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*木村 眞(茨城大学理学部)、大谷 栄治(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、宮原 正明(広島大学理学研究科地球惑星システム学専攻)

18:15 〜 19:30

[PPS22-P04] 斜長石の粒径と普通コンドライトの岩石学的タイプ

川崎 雄大1、*木村 眞1野口 高明1 (1.茨城大学理学部)

キーワード:普通コンドライト, 岩石学的タイプ, 斜長石, 熱変成作用

熱変成作用の程度によって普通コンドライトは岩石学的タイプ3-6に分類されている。このうちタイプ5,6の分類基準として斜長石の粒径が一般的に用いられており、タイプ5は10μm以下の粒子が多く、タイプ6は50μm以上の粒子が多い、とされている [1]。しかしながら、この基準は定量的ではなく、サイズ分布の統計的検討の必要性が指摘されていた [2]。そこで、本研究では斜長石の主としてサイズ分布を測定し、岩石学的タイプ5-6の区分を明らかにすることを研究目的とした。
 本研究ではHとL、LLグループのタイプ5、6コンドライト、計26試料を観察し、それらに含まれる斜長石のサイズ分布を画像処理ソフトウェアImageJを用いて測定した。また、斜長石以外の熱変成作用の程度を示す指標として、コンドルールや集片双晶を示すLow-Caパイロキシンの存在度も観察した。
 その結果、タイプ5と6の斜長石に関しては50μm以上のものがどちらにも分布することが明らかになった。個数分布において、タイプ5-6間で違いがみられるのは数μmサイズの小さな粒子の絶対数である。このため、累積個数割合のグラフにおいて、タイプ5の分布曲線とタイプ6の曲線には勾配に相違がみられる。タイプ5の試料は小さな粒子を豊富に含むためその勾配は急になるが、タイプ6は比較的大きな粒子が多いため勾配は緩やかになる。以上より、現在一般的に採用されている50μmという数値は粒子の個数の観点からは指標にならないことが明らかになった。そこで別のパラメータとして面積に注目すると、タイプ6はタイプ5に比べて80-100μm以上の粒子が面積的に多くなり、両タイプの相違が明確になった。
 一方、化学的グループ間の斜長石の特徴の相違も本研究で明らかになった。Hグループではタイプ5からタイプ6に変化するにつれて、コンドルールの組織は他のグループのものと同様に輪郭が不明瞭になりメソスタシスの再結晶度は高くなる。しかし斜長石のサイズ分布をみると、Hグループの試料はタイプ5-6間でほとんど違いがみられない。H6においても斜長石粒子は大きく成長してはいない。これに対して、L、LLグループではコンドルールの再結晶度や集片双晶の存在度と斜長石のサイズ分布の間には概ね相関がある。このため、HグループとL、LLグループとでは少なくとも斜長石のサイズ分布に関しては従来とは異なる分類基準を用いて岩石学的タイプを決定する必要があろう。

文献: [1] Huss et al. (2005) in Meteorites and the Early Solar System, [2] Kovach and Jones (2010) MAPS, 45, 246-264.