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[PPS24-03] 新たに開発した手法によるコンドリュールメルトへのシリカに富むガスの凝縮実験:急速な低Ca輝石の析出
キーワード:原始太陽系星雲, 凝縮, 低Ca輝石, シリカに富むガス, 低圧実験, コンドリュール
はじめに低Ca輝石(主としてエンスタタイト)とその多形は、太陽系岩石圏を構成する最も主要な相である。原始太陽系星雲における低Ca輝石の形成機構には不明な点が多い。低Ca輝石は、その凝縮過程でMg珪酸塩として先に晶出するフォルステイラトとは反応関係にあり、フォルステライトとシリカに富むガスとの反応によりエンスタタイトが包晶反応として形成することが熱力学計算により予測されている(Grossman, 1972)。しかし、その反応は生成層(エンスタタイト)中の固体内拡散が律速するために遅く、最大分別凝縮で近似でき、また、ガスから直接するエンスタタイトは微量である(Imae et al., 1993)。Tissandier et al. (2002)によりコンドリュールメルトへシリカに富むガスが相互作用してピジョン輝石(CaO~5-7wt%)が析出することを実験的に示した。本実験的研究では、原始太陽系星雲環境を再現する新たな実験法を開発し、この装置を用いて短時間で多量の低Ca輝石(CaO~1wt%)を析出させることに成功したので報告する。実験全圧は水素ガス導入下で主として100Paに設定し、排気系にバタフライバルブを用い、隔膜真空系を用いて制御した。各実験の最高温度は輝石の安定な1200~1450oCとし、冷却速度は主として約100oC/hとした。実験出発物質としてAllende隕石(CV3)の小片(1回の実験に~30-50mg)を用いた。上部に1mmの穴の開いたアルミナのるつぼ内には出発物質とシリカガス源としてシリカの粉末を試料と直接触れないように入れた。また対照実験としてシリカ粉末のない条件でも行った。結果シリカ粉末のない条件では微量の輝石が認められることがあるが、かんらん石が支配的に析出した。一方、シリカに富むガスのある条件では、顕著な変化が認められた。すなわち、溶融したAllende試料の1450oCでは試料全体が低Ca輝石に変化しており、かんらん石をポイキリティックに取り囲んで成長していた。一方、1350oC および1250oCと最高到達温度がより低温になるにつれ晶出するかんらん石および輝石は鉄成分に富み、縁に主として低Ca輝石がより多く析出した。議論出発物質へのシリカに富むガスの衝突頻度は大規模なバルクの組成変化を引き起こすほど高くない。シリカに富むガス源が存在しない実験温度条件は、輝石の安定温度域であるので、準安定に存在したかんらん石がメルトと共存していたことを示唆する。シリカに富むガス源がある実験では、シリカに富むガスが輝石の析出を助けたと考えられる。文献Grossman L. (1972) GCA 36, 597.Imae N., et al. (1993) EPSL 118, 21.Tissandier L., et al. (2002) MAPS 37, 1377.