日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS24_1PO1] 宇宙における物質の形成と進化

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*橘 省吾(北海道大学大学院理学研究院自然史科学専攻地球惑星システム科学分野)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、大坪 貴文(東北大学大学院理学研究科天文学専攻)、本田 充彦(神奈川大学理学部数理物理学科)

18:15 〜 19:30

[PPS24-P06] 原始惑星系円盤進化にともなう ダストの運動と組成分布

*永原 裕子1中田 守1小澤 一仁1 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻 )

キーワード:原始惑星系円盤, 化学組成, ダスト移動, 平衡計算

太陽系の力学的な進化を記述するために構築された惑星形成理論は、系外惑星や系外の円盤の観測によって改良が加えられ、近年まで発展してきた。他方、物質科学的な研究も、地球に飛来する隕石や探査によって得られた月試料、彗星の塵やいとかわの粒子などの分析によって発展してきた。太陽系の形成過程を解明する上で形成初期の情報を保持する物質科学的証拠は、円盤初期の物理過程に制約を与えうるが、そのためには化学と物理モデルのカップリングが必要不可欠である。
原始惑星系円盤における物理と化学を統合して理解するため,本研究においては、原始惑星系円盤初期の粒子の化学組成を中心星からのの関数として決定し、各粒子の円盤内の物理的移動を追跡することで,円盤内の粒子の総化学組成の時空間変化を調べることを目的とした。
モデルは,化学平衡計算とダスト粒子移流拡散方程式を基本とする.熱力学的平衡計算により,円盤内の各初期位置における凝縮相の組成を決定し,その組成は移動により変化しないものとした.各粒子の運動は一次元定常α円盤を仮定し,ラグランジアン法による移流として追跡した。初期に内側に存在する粒子は高温のため揮発性元素に枯渇した組成を持つ一方,外側の粒子は未分化な組成をもつ。粒子は時間とともに、全体としては太陽方向へ移動するが、乱流拡散の効果により円盤外向きの成分も存在する。内側の揮発性元素に枯渇した粒子と外側の揮発性元素を含む粒子との混合を解析した。
計算の結果,以下のことが明らかとなった.(1) 粒子は全体としては太陽方向へ移動するため、円盤内粒子の総化学組成は,各時間において円盤外側ほど未分化となる。(2) 特定の位置についてみると、時間経過とともに未分化な組成となる。(3) 円盤面密度,温度構造をパラメータとして検討した結果、高温の円盤ほど、円盤内側領域の組成が未分化なものに置き換えられるまでの時間が遅くなる。これは高温の円盤ほど分化した化学組成領域が広がるため、外側領域から未分化組成の粒子が移動するのに時間を要するためである。
これらの結果をC型コンドライトの組成と比較したところ、円盤内側からCV, CO, CMの順番に各コンドライトを説明しうる領域が存在するということがわかった。また本研究により,小惑星帯においてC型コンドライト組成を作り出すためには,初期に高温領域が広く広がった円盤,さらに早期に微惑星形成がおこることが必要であることが明らかとなった。