日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS25_2AM2] 隕石解剖学: 太陽系物質の総合的理解に向けて

2014年5月2日(金) 11:00 〜 12:45 213 (2F)

コンビーナ:*瀬戸 雄介(神戸大学大学院理学研究科)、臼井 寛裕(東京工業大学地球惑星科学科)、伊藤 正一(京都大学大学院理学研究科)、薮田 ひかる(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、座長:三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、薮田 ひかる(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)

12:00 〜 12:15

[PPS25-12] Allende隕石の水熱変成実験: 隕石母天体の水質環境の解明を目指して

*飯国 恒之1留岡 和重1瀬戸 雄介1 (1.神戸大学大学院理学研究科)

キーワード:炭素質コンドライト, 水熱変成実験, 含水鉱物, Allende

はじめに: 炭素質コンドライトは、化学的・年代学的に最も始原的な物質であると考えられる一方で,それらの多くは隕石母天体上で水や熱による変成を受けた痕跡を残している。特に水と岩石の相互作用は微惑星の初期物質進化を支配した重要な変成作用と考えられている。水質変成によって生成される二次鉱物は隕石の化学的タイプごとに異なり,このことは隕石母天体の水質環境(温度,変成期間,pH,水/岩石比,酸素分圧など)の違いを反映していると考えられる。これまで,炭素質コンドライトの主要構成鉱物であるカンラン石や輝石に関しては,水質変成実験が行われ,溶液種やpHと生成鉱物の関係について報告されている#1 -#2 。一方,実際の炭素質コンドライトを用いた研究例#3 は少ない。本研究では,炭素質コンドライトの中でも水による変成程度が低いCV3タイプのAllende隕石を出発物質として,炭素質コンドライト母天体を模擬した条件下で,水熱変成実験を行った。実験: 出発物質としてAllende隕石をブロック状(2.5 mm×2.5 mm×6 mm)にカットしたものを用いた。反応溶液は過去の研究例#4 を参考にして,H2O (pH 7),3.1×10-6 N-NaOH (pH 8.5), 1.0×10-4 N-NaOH (pH 10), 1N-NaOH (pH 14) を用いた。溶液/岩石体積比(W/R)は母天体環境として考えうる0.5#5 ,2 ,8 とした。試料容器としてステンレス製の耐圧容器に封入したPTFE容器のダブルカプセル(外容器: 25 ml, 内容器: 1 ml)を用いた。外容器に塩酸と等しいモル量のマグネジウムおよび鉄を導入し,H2ガスを発生させることで試料室内を還元雰囲気に保った。変成実験は,すべて温度200 ℃、圧力約15 気圧(200 ℃での水の飽和蒸気圧),時間168 時間の条件下で行った。回収試料は,放射光X線回折装置(SR-XRD)を用いて結晶相同定を行い,走査型電子顕微鏡(SEM-EDX)を用いて微細組織の観察および組成分析を行った。結果と考察: pH 7 かつW/R:0.5 の条件を除いたすべての条件でマトリックス中にサーペンティンが生成していることが確認された。サーペンティンはマトリックス中のオリビンの隙間を充填するように生成しており,pHが高くなるほどサーペンティンの生成量が大きくなる傾向が見られた。また,強塩基 (pH 14)かつ低W/R比(0.5)の条件ではスメクタイトの生成も確認された。ほぼすべての条件で,試料表面にCalcite(CaCO3)が生成しており,H2O (pH 7)を用いた実験でのみAnhydrite(CaSO4)が生成していた。Allende隕石を出発物質として用いた本研究の結果は,カンラン石や輝石を出発物質として用いた過去の研究と比べて,比較的低温かつ中性溶液条件でも十分に含水鉱物化が進行することを示している。#1 Ohnishi and Tomeoka (2007) MPS, 42, 49-61. #2 Iishi and Han (2000) Neues Jahrbuch Fur Mineralogie-Monatshefte 2:49-59. #3 Jones and Brearley (2006) GCA, 70, 1040-1058. #4 Zolensky et al. (1989) Icarus, 78, 411-425. #5 Clayton and Mayede (1998) GCA, 63, 2089-2104.