日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS26_30AM2] 来たる10年の月惑星探査に向けた構想と戦略

2014年4月30日(水) 11:00 〜 12:45 418 (4F)

コンビーナ:*出村 裕英(公立大学法人会津大学)、並木 則行(千葉工業大学 惑星探査研究センター)、小林 直樹(独立行政法人宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部固体惑星科学研究系)、大槻 圭史(神戸大学大学院理学研究科)、渡邊 誠一郎(名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻)、三好 由純(名古屋大学太陽地球環境研究所)、座長:大槻 圭史(神戸大学大学院理学研究科)、並木 則行(千葉工業大学 惑星探査研究センター)

11:45 〜 12:00

[PPS26-10] 小型月着陸実験"SLIM"の構想とその概要

*坂井 真一郎1澤井 秀次郎1SLIM WG 1 (1.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:月惑星探査, 月面着陸, 着陸誘導航法制御, ピンポイント着陸, イプシロンロケット

小型実験機"SLIM"は、重力環境下でのピンポイント着陸技術を月面着陸により技術実証することを目的とする、500kg級小型探査機である。月面や火星への着陸については、世界的には既にミッション例があるが、これらの着陸はおよそ数kmオーダーの精度での着陸であり、基本的には安全な場所を選んだ上での着陸であった。一方で、「SELENE」探査機などを好例として、近年では月・惑星についての科学観測が高精度化しており、これに伴って科学的関心を集める特定の場所などが特定されるようになってきている。一つの例は、SLIMが現在ターゲットの一つとしている"マリウス丘の縦穴"などであり、この縦穴の内部構造を探査により調べるためには、その近傍数100m以内に着陸することが必要になると考えられている。"SLIM"ではこのような背景から、従来kmオーダーだった着陸精度を、100mオーダーに飛躍的に高精度化することを目的とし、そのために必要な要素技術開発を行ってこれらを実際の月面着陸により実証することを目的としている。また同時に"SLIM"は、近年の宇宙機小型化の流れを踏まえて、イプシロンロケットで実現可能な小型探査機としての実現をも目指している。このような"SLIM"実現のために必要となる要素技術は、まずピンポイント着陸実現のための航法誘導制御技術であり、具体的には、カメラ画像によるクレーター抽出・照合のための画像照合航法技術や、着陸レーダー技術、障害物の検知と回避技術などが該当する。この他にも、特に探査機小型化の要請から、小型軽量な着陸衝撃吸収システムや、高性能な推進系、探査機重量の削減のためのタンクと主構造の一体化、薄膜太陽電池セルなどの採用による電源システムの小型化など、多くの技術開発も行っている。従来から、SLIMワーキンググループの活動の中で各大学の研究者などにも多数参加頂きながら、これら要素技術についての研究開発を既に進めて来ており、その成果が探査機の姿としてまとまりつつある。その成果は既に、3号機目のイプシロンロケットミッションとしての提案に至ったところである。 SLIM実証実験機の実現は、本来の目的である「ピンポイント着陸技術の実証」というマイルストーンの達成としても重要なものである。それと同時に、将来の「イプシロンロケットによる探査ミッション」実現についても、特に小型・軽量なシステムを実現する上での要素技術が複数実証される予定である点でも、大きな意義を有しているものと考えている。 講演においては、上記で述べたSLIMの意義・目的と、その検討活動の一環で行われている多数の工学研究の例とその成果、これらを踏まえた探査機システム成立性の状況などをご報告させて頂き、併せて、SLIMをベースとした時に、将来のイプシロンロケットによる小型探査ミッションについてどのような展望が見えてくるのか、議論させて頂く予定予定である。