日本地球惑星科学連合2014年大会

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インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG10_2PO1] Microcracks preceding ruptures in the crust related to earthquakes, volcanic eruptions and landslide

2014年5月2日(金) 16:15 〜 17:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*藤縄 幸雄(一般社団法人危機管理対策協議会)、芳原 容英(電気通信大学情報理工学部情報・通信工学科)

16:15 〜 17:30

[SCG10-P01] 半導体鉱物の破壊に伴う電磁放射

*小沢 光幸1武藤 潤1長濱 裕幸1長瀬 敏郎2 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻、2.東北大学総合学術博物館)

キーワード:地震電磁気現象, 半導体鉱物, ラジオ波, p-n接合

はじめに
弾性波が鉱体に伝搬するとラジオ波と呼ばれる電磁波が発生する。ラジオ波は弾性波の周波数の10~100倍という高い周波数をもち、その発生は半導体鉱物を含む鉱体での発破実験や、室内での鉱体サンプルを用いた実験で観測されている。こうした観測によるとラジオ波の発生は半導体鉱物を含む鉱体の持つ整流性が強く関係していると示唆されている。半導体鉱物はn型、p型と2つに区別する事ができ、n型、p型が組み合わさると整流性を持つp-n接合を作る。鉱体内部には半導体鉱物のp-n接合が、並列および直列に多数つながって存在するため、鉱体全体で整流性を示す。過去の研究ではラジオ波の発生メカニズムを明らかにするために、鉱体全体の巨視的なスケールの整流特性を測定した。しかし、半導体鉱物における1つ1つの微小なp-n接合の整流特性の評価がされていなかったため、鉱体の整流性の定量的な評価は困難であった。
半導体鉱物の鉱物組成は、微量元素や欠陥の存在により不均質性を持つ。整流性は組成に強く依存するので、整流性の定量的な評価には、微小部位ごとの組成解析が必要である。本研究では、半導体鉱物の黄鉄鉱の組成と整流性を測定する。そして、鉱体における電磁放射の可能性について議論する。

手法
半導体鉱物試料として宮城県和賀仙人鉱山産の黄鉄鉱を用いた。試料は厚さ0.38 cm、表面積1.4 cm2 の大きさに切断し、測定を行った。
電解法とSEM-EDSにより試料の組織観察、組成測定を行った。そして、プロ-ブ試験機による熱起電力測定、電気特性測定を行った。熱起電力測定により半導体鉱物のp型、n型の判別をし、電気特性測定において整流性の定量的評価を行った。

結果
電解の結果、試料表面の組成の不均質性は溶解度の違いとして現れた。そのため、試料表面に腐食像が現れ、一部は累帯構造を成した。累帯構造の各ゾーンの幅は数十~数百μmである。熱起電力測定によると、こうした腐食によって得られた累帯構造はp型とn型の存在領域の違いを反映している事が分かった。p型の領域はn型の領域に比べ溶解度が大きかった。SEM-EDSの解析によると、p型の領域に約1.0 wt.%のPb の微量元素が結晶面に平行に存在する事が明らかにされた。
プローブによる電気特性測定では、試料のp-n接合部で整流性が確認された。整流性の特性はp-n 接合部の電流-電圧特性を測定することで明らかにされ、pn 接合の順方向降伏電圧はVFM = 0.3 V、 逆方向降伏電圧はVRB = 1.5 V であった。

議論・結論
2つの種類の岩石が接触する際、岩石表面間で電子の移動が起こり、電位差が生まれる。この接触による帯電は岩石の剥離時の電磁放射の原因となりうる。もし、2種類の岩石をp型とn型の半導体鉱物と考えると、接触による帯電電圧はp-n接合の順方向降伏電圧で与えられる。接合部はコンデンサーを形成していると見なせる。接合部の剥離の際、表面の帯電密度により極板間の電圧がパッシェンの法則における極板間気体の降伏電圧に達するとコロナ放電が生じる(空気の場合、コロナ放電を引き起こすのに5.0×10-5 C/m2 の帯電密度が必要)。実験結果より、黄鉄鉱のp-n接合の剥離面に生じる帯電密度は2.7 × 10-4 C/m2と見積もられる。誘電緩和による剥離面の帯電の減衰の影響を加えると、接触面同士が剥離される速度を考慮する必要がある。この場合、コロナ放電を引き起こすのに必要な剥離速度は2.0 km/s と見積もられる。この結果より、黄鉄鉱の破壊が破壊伝搬速度2.0 km/s以上の剪断破壊により引き起こされる時、コロナ放電による電磁波の発生が期待される。
以上のように、黄鉄鉱の破壊は電磁放射の原因となりうる、鉱体から発生する電磁波の周波数等の特性を明らかにするために、更なる研究が求められる。