日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61_2AM1] 岩石・鉱物・資源

2014年5月2日(金) 09:00 〜 10:45 311 (3F)

コンビーナ:*角替 敏昭(筑波大学生命環境系)、藤永 公一郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、三宅 亮(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室)、土谷 信高(岩手大学教育学部地学教室)、座長:角替 敏昭(筑波大学生命環境系)、土谷 信高(岩手大学教育学部地学教室)

09:30 〜 09:45

[SCG61-03] 東北日本の白亜紀~古第三紀花崗岩類のSr-Nd-Pb-Hf同位体岩石学

*土谷 信高1加々島 慎一2平原 由香3高橋 俊郎3仙田 量子3常 青3木村 純一3 (1.岩手大・教育、2.山形大・理、3.海洋研究開発機構)

キーワード:東北日本, 花崗岩, Sr-Nd-Pb-Hf同位体, 岩石化学

日本列島は,太平洋西部の5億年に及ぶ沈み込みによって形成されたと考えられ,古生代後期から新生代の付加体および付加体起源の高圧型変成帯が主要な構成物である(e.g., Maruyama, 1997; Isozaki et al., 2011).Maruyama (1997)は,日本列島は太平洋型造山帯の典型例であり,中央海嶺の周期的な沈み込みに伴う大陸地殻の急成長と広域変成帯の上昇定置を通して形成されたと論じた.一方Jahn (2010)は,西南日本の花崗岩類がリサイクルした古い大陸地殻から形成されたと述べた.日本列島の形成史を明らかにするためには,大陸地殻物質の主体をなす花崗岩類の同位体岩石学的検討は非常に有効である.加々美ほか(2000)は,東北日本の花崗岩類のSr-Nd同位体岩石学的特徴から,北上帯,北帯(阿武隈帯),および南帯(足尾帯・美濃帯)に区分し,この順番大陸地殻成分に富んでいくことを見い出した.本報告では,加々美ほか(2000)の結果をさらに発展させるため,東北地方の花崗岩類のSr-Nd-Pb-Hf同位体岩石学的特徴について検討する.Sr-Nd-Pb-Hf同位体分析は,北上帯(階上・田野畑・宮古・金華山・遠野・人首・千厩などのアダカイト質累帯深成岩体とそれ以外の深成岩体および岩脈類の一部),阿武隈帯(白神山地,生保内付近,太平山地,脊梁山地,阿武隅山地),朝日帯(西朝日岩体, 中岳岩体, 大朝日岩体),足尾帯(奥利根地域,只見地域,奥只見地域,帝釈山地,足尾山地)の花崗岩類について行なった.これらのデータから,北上帯,阿武隈帯,朝日・足尾帯の順番で大陸地殻物質の影響が大きくなっていることが示され,このトレンドは大陸地殻物質に枯渇した端成分とそれに肥沃な端成分の混合によるものと考えることができる.大陸地殻物質に枯渇した端成分としては,沈み込んだ海洋地殻および枯渇したウェッジマントルと考えて矛盾はない.一方大陸地殻物質に富む端成分については,沈み込んだ堆積物(Plank and Langmuir, 1998; Chauvel et al., 2008)ではHf-Nd同位体比のトレンドを説明できない.Hf-Nd同位体比のトレンドを説明するためには,古い大陸地殻起源の砕屑性ジルコンに富むHf同位体比初生値の低い堆積物(Chauvel et al., 2008)を考える必要がある.またHf-Nd同位体比のトレンドを詳しく見ると,北上帯のトレンドは全体のトレンドと斜交しており,よりHf同位体比初生値の低い端成分との混合を考えざるを得ない.北上帯は前期白亜紀の海嶺沈み込みに関連したアダカイト質岩の産出で特徴づけられることから,北上帯に沈み込んでいた海洋地殻の年齢は若いはずであり,深海底堆積物の関与が少なかったために大陸地殻起源の堆積物の影響が相対的に高くなったことで説明できる.