日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61_2AM1] 岩石・鉱物・資源

2014年5月2日(金) 09:00 〜 10:45 311 (3F)

コンビーナ:*角替 敏昭(筑波大学生命環境系)、藤永 公一郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、三宅 亮(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室)、土谷 信高(岩手大学教育学部地学教室)、座長:角替 敏昭(筑波大学生命環境系)、土谷 信高(岩手大学教育学部地学教室)

10:30 〜 10:45

[SCG61-07] モンゴルTariat Depression産スピネルレールゾライトゼノリスにおける構成鉱物中のFeの酸化数:特にかんらん石中のFe3+の意義

*江島 輝美1小山内 康人2大藤 弘明3 (1.独立行政法人産業技術総合研究所、2.九州大学比較社会文化、3.愛媛大学地球深部ダイナミクスセンター)

キーワード:かんらん石, Feの酸化数, スピネルレールゾライトゼノリス, メスバウアー分光分析, モンゴル

モンゴルTariat地域は、Baikal_Mongolia rift における深層巨晶ゼノリス(deep-seated megacrystic xenolith) およびマントルゼノリス(mantle-derived xenolith) のもっとも有名な産地の一つである。Tariat地域では、大規模に噴出した洪水玄武岩中にガーネット-ウェブスタライト・ガーネットレールゾライト・スピネルレールゾライトが観察される(Osanai et al., 2011)。本研究では、Tariat地域におけるスピネルレールゾライトの構成鉱物および玄武岩溶岩中のかんらん石におけるFeの酸化数をメスバウアー分光分析および電子線微小部分分析(EPMA)法を用いて定量し、これらの構成鉱物に含まれるFe3+の形成時期について検討した。研究に使用したスピネルレールゾライトゼノリスは、地表における変質や酸化の影響を受けていないものを用いた。メスバウアー分光分析に用いた試料の純度は、EPMA、X線粉末構造解析(XRD),ラマン分光分析,透過型電子顕微鏡観察により評価した。   Tariat地域のレールゾライトゼノリスは、かんらん石(Fo90Fa10)、単斜輝石[(Na0.17 Ca0.71Mg0.81Fe0.09Al0.20)2.00(Si1.89Al 0.11)2.00O6]、斜方輝石[(Mg0.85Fe0.09Al0.04Ca0.02) (Si 1.89Al0.11)O3]およびスピネル[(Mg0.81Fe2+0.22)1.03(Al 1.80 Cr0.17)1.97O4]よりなる。かんらん石、斜方輝石、スピネルは均質である。単斜輝石の粒子はリム(1 μm ~ 50 μm程度)にシンプレクタイトが観察される。この部分は、本体の単斜輝石よりもNaおよびAl含有量の少ない輝石と長石に近い組成を持つガラスからなる。   メスバウアー分光分析に用いた粉末試料は、玄武岩とゼノリスの接触部分を避けゼノリスの中心部から分離した斑晶を用いた。メスバウアー分光分析の結果、かんらん石、斜方輝石、単斜輝石およびスピネルのFe2+:Fe3+の比は、97(1):3(1) 85(8):15(1) 74(4):26(3) 66(8):34(5)であった。透過型顕微鏡による観察結果から,かんらん石中のFe3+は析出物や不純物によるものではなく,かんらん石の構造中に存在すると結論される。一方、このゼノリスを捕獲している玄武岩中のかんらん石のFeは、EPMA法によるFeの酸化数の定量の結果、すべてのFeが2価の鉄であった。マグマ中のかんらん石斑晶がFe3+を含まず、マントルゼノリスの構成鉱物すべてが少量のFe3+を含むという事実は、マグマに取り込まれる以前にスピネルレールゾライトゼノリス中の構成鉱物がFe3+の存在できる環境下に置かれたことを示唆する。   今後、他地域のゼノリス及び深さが異なる場所からもたらされたマントルゼノリスの詳細な研究を行うことによって、マントルの酸化還元状態の詳細が明らかになることが期待される。